川崎重工業グループが一致団結した成果
開発リーダーを務めた同社の市聡顕氏は、「川崎重工業グループの粋を集めて、テクノロジーの頂点を目指したモーターサイクルが、Ninja H2Rです」と語る。
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Kawasakiが目指すのは、強さと優しさを共存させたモーターサイクル。Ninja H2Rも、驚きの加速力や超高速走行能力を有しながら、非常に扱いやすいマシンに仕上がっている
「新しいものをつくるときは、共通のイメージを持つことが非常に重要です。そこで、明確な目標を決めて開発に着手しました」(市氏)
●市聡顕氏……同社技術本部第一設計部第一課基幹職。1999年入社。Ninjaの設計部門に配属され、エンジンの設計に携わる。手にしているのは、スーパーチャージャーのインペラである
開発チームが目標に掲げたのは、Ninjaの乗りやすさと、1969年の販売当時に圧倒的な加速力で業界を震撼させた、750SSマッハⅣ(H2)の融合だ。NinjaとH2の名を冠したモンスターマシンは、同社のガスタービンビジネスセンターや技術開発本部と新たに共同で設計・開発したスーパーチャージドエンジン(過給エンジン)を搭載。最高出力310ps、最高速度300km/hを優に超える異次元の加速パフォーマンスを実現した。
スーパーチャージドエンジンはすべてを自社設計することで、優れたノッキング抑制能力や、インタークーラーを必要としない構造を実現。コンパクトサイズだが、圧倒的なパフォーマンスを誇る
もちろん安全性の配慮にも余念はない。
「これだけの性能があると、高速走行や急激な加速ですぐに前輪が浮き上がってしまいます。それを軽減して安定性を高めるために、弊社の航空宇宙カンパニーと開発した、カウルを路面に押し付ける空力デバイスを搭載しています」
Ninja H2Rには、超高速域での接地力を増やし安定性を確保するためのウイングを装備
ほかにも、最先端のロボット技術によるフレーム製造など、川崎重工業グループの技術力が随所に盛り込まれている。現時点で最高のNinjaだが、Kawasakiのチャレンジは終わらない。
ロボットが製造するフレームも、より優れた安定性を維持するために独自に開発したもの。パイプ自体に衝撃吸収性があり、軽量化を追求しながらも外乱をいなしてくれる
「Ninjaの進化の方向性の一つとして、人工知能を搭載したモデルが登場するかもしれません。天候や混雑状況を教えてくれたり、ライダーの体調を気遣ってくれたり……。相棒と対話しながら乗る喜びを提供したいですね」
世界中のライダーをワクワクさせてくれる、新しいNinjaの誕生が、今後も期待できそうだ。
<Ninja H2R>
■希望小売価格:550万円(税別)■取扱指定店で受注生産。今年は受付期間終了■全長×全幅×全高:2070×850×1160mm■車両重量:216kg■総排気量:998cm3■最高出力:228kW(310PS)/14000rpm ラムエア加圧時:240kW(326PS)/14000rpm■燃料タンク容量:17L
サーキット専用車のNinja H2R。プレミアムブランドとしてのKawasakiを打ち出すために、機能美にもこだわりが。美しく反射する銀鏡塗装が採用されているほか、各パーツの溶接やボルトの頭のデザインなども徹底している
<Ninja H2>
■流通価格:300万円前後■一部販売店にて輸入車を販売■全長×全幅×全高:2085×770×1125mm■車両重量:238kg■総排気量:998cm3■最高出力:150.8kW(205PS)/11000rpm■燃料タンク容量:17L
Ninja H2は、Ninja H2Rの公道向けモデル。部品はほとんど同じだが、最高速度や最大馬力などは抑えられている一方で、ヘッドランプやウインカーなど、公道を走るために必要なパーツを備えている
取材・文/黒田知道 撮影/林紘輝(本誌) 写真/川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー