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「俺はあの笑顔が好きだ。るりちゃんから笑いを取りたい」――46歳のバツイチおじさんはヒンドゥー教の聖地で大きな邪念を抱いた【第40話】

翌朝4時30分。 るり「ごっつさーん、起きてますかー? 朝ですよ~」 ドア越しに聞こえるるりちゃんの声で目が覚めた。 嗚呼、なんて幸せなんだ。 俺 「今、起きた~! すぐ用意する~!」 速攻で着替えをした。男は楽でいい。 今日は朝陽を撮影するため、インドのバンガロールで再購入したカメラを用意した。カニャクマリの景色はインドの他の街とは全然違い、ディレクターとして「撮りたい」という欲求を想起させる。そして、この街に溶け込むるりちゃんをどうしてもカメラに収めたかった。 るり「すごい人ですね」 俺「お祭り並みの人だね。ここに着いてから一番人がいるかもね」 朝陽が出る前のカニャクマリの街はものすごい人だった。全員が早足で朝陽を礼拝する海岸沿いの沐浴場であるガートを目指していた。俺たちも人並みに身を任せ、足早にガートを目指した。 るり「わー、すごい人!」 俺 「すごいね~」 朝陽を礼拝するガートから、交錯する三つの海を挟み、ヴィヴェーカーナンダの墓とティルヴァッルヴァルの巨像が見えた。そこにはものすごい数のヒンドゥー教徒が朝陽を待ちわびていた。すでに海に入り、沐浴を始めている人も多い。巡礼者を目当てにチャイや軽食を売りに来る人、写真を撮ってお金を取る人などもいた。たくましいインド人の商売人と敬虔なヒンドゥー教徒のコントラストが面白く感じた。

朝5時前なのに多くの巡礼者たちが集まる

チャイ売りの少年から購入した温かいチャイ

俺たちは朝陽が出るのを温かいチャイを飲みながら待った。そして… るり「ごっつさん、朝陽です」 俺「おーーーーー!!!」 御来光だ! 金色の朝陽が海を照らした。三つの海がちょうど交わる場所は潮が激しくぶつかり合い、大きな白い波を立てていた。その波しぶきに金色の朝陽が差し込み、幻想的な光景を醸し出している。 ヒンドゥー教徒たちは一斉にお祈りを始めた。波打ち際で沐浴をするカラフルな服を着たインド人たちは、その景観に完全に溶け込んでいた。

カニャクマリの御来光

御来光を拝みに来たヒンドゥー教徒

俺は太陽に向かい目をつぶった。 ここで、個人的なお祈りはしなかった。 ただ目をつぶり太陽の力を感じた。 いや、感じたかった。 るり「ごっつさん、そんなに長い時間、何をお祈りしてたんですか?」 俺「秘密だよーん」 るり「ふふふ(笑)」 可愛い。 素敵すぎる笑顔だ。 なんて自然な笑い方をするんだろう。 るりちゃんの蒼い洋服と金色の朝陽の光のコントラストが、彼女を一層かわいく見せた。 金色の朝陽を浴びてるからナウシカにも見える。 少女「ひめねえさま、真っ青な異国の服を着ているの。まるで金色の草原を歩いているみたい」 大婆様「おおお……、その者蒼き衣を纏いて金色の野に降りたつべし。古き言い伝えはまことであった」 そうか、るりちゃんは清き心を持つ聖女なんだ。 ナウシカなんだ。 きっと、心が透き通るように綺麗なんだ。 だからあんな自然な笑い方ができるんだ。 俺はるりちゃんを好きになった理由に初めて気づいた。 「そうか、るりちゃんの笑顔には一片の曇りもないんだ」

素敵な笑顔のるりちゃん

ずっとお笑いに携わる仕事をやってきた。 25年間お笑いのことだけを考えて仕事をしてきた。 趣味もお笑い番組や舞台の鑑賞。 旅のあいだもずっとTBSの深夜ラジオJUNKをダウンロードして聴いている。 俺はお笑いが好きだ。 ずっと、お笑いのことばかり考えてたからこそ気づくこともある。 人は社会に出ると笑い方が変わる。 媚びた笑いが習性になっている人もいる。 人の暗部だけを見て笑う人もいる。 俺の場合い気狂いっぽい変なとこで不自然に笑ったりする。 笑い方を忘れてしまった人もいる。 皆、高校時代くらいまでは誰もが屈託のない笑顔が自然とできていたはずなのに。 改めてるりちゃんの笑顔を見た。 るりちゃんは笑顔は本当にナチュラルだ。
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「好きだな~、あの笑顔」
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