更新日:2017年11月13日 19:59
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世界初の都市高速・首都高は醜いのか? 首都高C1日本橋付近地下化のメリットとデメリットを考える

 対するデメリットは、①費用の増大と、②完成後の若干の渋滞増加だ。  ①については前述の通り、少なくとも数倍にはなる。当初予定されていた1412億円は、首都高が料金徴収期間を15年延長することで捻出することが決まっていたが、増大分は主に国と都が税を投入することになる。②は、地下化によって車線数が増えるわけではなく、逆に勾配は増えることが原因だ。これだけの予算をかけて、渋滞がかえって増えるのは残念だ。  加えて、地下化の最大の目的と思われる「景観の改善」は、かなり疑わしい。というより、現状の景観が醜く、首都高がなくなれば美しくなるという認識を国交省が示したことが悔しい。

首都高を取っ払った日本橋のイメージCG。日本橋川に空を取り戻す会のHPより

 もちろん、そういう意見があることは間違いないが、国民の大多数がそう思っているかというと、そうではない。私の知る範囲では、日本橋付近の景観について、メディアで報道されるように「醜い」と思っている人の割合は意外なほど少なく、国民の大多数は無関心であり、逆に「首都高は未来的でカッコイイ」という認識も少なくない。  日本橋上空から首都高を取っ払って出てくるのは、垂直護岸のドブ川と、それに架かるちょっと古めかしい石の橋だけ。逆に首都高こそ、東京が世界に誇るユニークな景観ではないか? それは世界初の都市高速であり、戦後日本の高度成長や突貫工事を象徴する歴史的遺産でもある。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1385807

建設当時の首都高C1日本橋付近の上空写真 写真/首都高速(株)

 首都高の生みの親である山田正男氏(東京都建設局長・首都高速道路公団理事長等を歴任)が、その慧眼により、オリンピックまで残り5年というギリギリの段階で建設に着手、奇跡的に開通させた首都高。それは、運河や道路などの公共用地を可能な限り有効活用し、新規用地取得を約2割に抑えたことで実現した。当時それを批判する声はなかったし、この乱暴な作り方こそ、あの頃の日本の熱気そのものだった。

建設当時の首都高C1日本橋付近 写真/首都高速(株)

 私は、首都高は東京のエッフェル塔だと考えている。エッフェル塔も、完成当時は知識人を中心にひどく忌み嫌われた。しかし今、「エッフェル塔を壊して美しいパリを取り戻せ」と主張する人がいるだろうか。  日本橋付近の首都高を地下化して生まれる新たな景観が、どこかの広告代理店が考えそうな、陳腐で薄っぺらなものにならないことを祈る。 取材・文・写真/清水草一(道路交通ジャーナリスト) 【清水草一】 1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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