更新日:2022年11月25日 23:26
ライフ

ウーマン村本が言及しなかったこと「大久保利通の決断が沖縄・尖閣諸島を守った」

中国共産党の機関紙が沖縄の領有権を主張

 ちなみに現在、問題となっている尖閣諸島については何度も現地調査を実施し、「国際法上、いずれの国にも属していない無主地である」ことを確認したうえで1895年1月14日に閣議決定を行い、日本領土(沖縄県)に編入している。  沖縄の帰属問題を解決したからこそ尖閣諸島も日本領に編入することができたわけだ。もし大久保利通が、国内の政治的混乱や国際社会の反対を理由に、台湾出兵を決断しなかったら、沖縄と尖閣諸島の帰属問題はその後も外交問題になっていたかもしれない。言い換えれば、大久保利通のような指導者がいたから、沖縄も尖閣諸島も日本領になっているのだ。そして、この問題は過去の話ではない。  台湾出兵の契機となった、台湾で殺害された宮古島の島民のお墓が沖縄県那覇市にある「護国寺」の一角に建立されている。「台湾遭遇者之墓」と刻まれたこの墓碑は、近代史において重要な史跡なのだが、日本人の大半がその存在を知りもしない(NHKは大河ドラマの解説で、この墓碑を紹介してくれたらいいのだが)。 台湾遭遇者之墓 台湾遭遇者之墓 その一方で昨年11月、私が訪れたとき、台湾や中国から来た観光客たちがこの墓碑を見学していた。この墓碑の重要性を台湾や中国の人々は知っているのだ。  中国共産党の機関紙「人民日報」は2013年5月8日付で「歴史的に未解決の琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を掲載した。党・政府の見解を示す同紙が沖縄の帰属を未解決と断定し、中国の領有権を示唆したのは戦後初めてのことだ。執筆したのは政府系シンクタンク中国社会科学院の張海鵬氏と李国強氏で、「琉球は明清両朝の時期、中国の属国だった」とし、日清戦争後の下関条約に関し「清政府に琉球を再び問題にする力はなく、台湾と付属諸島(尖閣諸島を含む)、琉球は日本に奪い去れた」と主張した。  菅官房長官は5月8日の記者会見で、この論文について「全く不見識な見解だ」と不快感を表明し、沖縄と尖閣諸島は「紛れもなくわが国の領土だ」と強調した。  だが、国際法上、尖閣諸島を実効支配しているとみなされるためには人員の配置や建築物の建設が必要だ。この国際法の論理を理解しているがゆえに自民党は2014年の衆議院選挙で「尖閣諸島に公務員を常駐させる」という公約を掲げたが、その公約は実行されていない。  恐らく「中国を刺激すべきではない」と主張する外国や国内の与党勢力の反対があるからだろう。だが、明治時代、内外の反対を跳ねのけ、大久保利通が台湾出兵を断行しなかったら、果たしてどうなっていたことか、いまこそ思い起こすべきだろう。  折りしも1月14日、石垣市では「尖閣諸島開拓の日記念式典」が開催される。先人の歴史に学ぶべきことは多い。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保

経済的安全をいかに守るか?


経済的安全をいかに守るか?実践的な入門書が発売!

 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
1
2
おすすめ記事