金色のヌーなら1000万円以上!? まったく野性味のないアフリカのトロフィー・ハンティング事情
動物の狩猟について考えることは、常にその人の思想や哲学、信仰などが問われる行為だ。
例えば日本では、年間約19万頭のシカが狩猟されている。個体数がこの約30年間で10倍に増え、農作物に年間56億円の被害を与えている(ともに2016年のデータ。鳥獣被害の総計は172億円)ため、国や自治体は有害鳥獣としての駆除を推進している。
これに対して、「かわいそう」「当然だ」「仕方ない」「せめて食べて供養を」など、さまざまな立場からさまざまな意見が表明される。もちろん「1頭も殺すべきではない」という意見もある。
では、アフリカでハンターたちが合法的にヌーやキリン、ライオン、ゾウなどを撃ち殺し、その首を(ワシントン条約の範囲内で適法な分だけ)剥製にして持ち帰ることは?
「絶対に許せない」「文化だから当然だ」「そもそも適法ならば何も言うことはない」など、こちらもさまざまな意見が噴出する。だが、ハンターたちが「趣味として」狩猟を行っていることが、害獣駆除としての狩猟よりも激しい議論を生みがちだ。
ドキュメンタリー映画『サファリ』(ウルリヒ・ザイドル監督)は、アフリカ南部のナミビアの「ハンティング・ロッジ」で行われている「トロフィー・ハンティング」の様子を淡々と描いた作品だ。そこではドイツとオーストリアからやってきたハンターたちが、サファリの中で動物たちを狩猟し、現地の人々がその動物を解体する様子が静かに映し出されている。特に説明的なナレーションなどもなく、ザイドル監督がこのトロフィー・ハンティングに好意的なのか批判的なのかも、観るものの判断に委ねられている。
映画では一切説明されていないが、アフリカでは24か国で狩猟が認められ、年間1万8500人のハンターがアフリカを訪れ、約217億円を消費している。そして映画に登場するハンティング・ロッジでは、ヌーが1頭615ユーロ(約8万円)、エランドが1700ユーロ(約23万円)、キリンが1頭3500ユーロ(約47万円)といった価格で狩猟されているのだ。
映画では淡々と描かれているトロフィー・ハンティングの様子だが、この映画の日本配給を決めたサニーフィルムの有田浩介氏は「現在のトロフィー・ハンティングは、狩猟としての倫理が崩壊している」という問題意識からこの映画に取り組んでる。
「今のアフリカの狩猟は、かつてヘミングウェイが描いた大冒険のようにロマン溢れるものではなく、狩猟区のなかで現地のガイドを雇い、動物を撃つ、という全部お金で準備されているものになっています。そのこと自体は別にいいと思うんですけど、私が行きすぎていると思うのはハントされる動物が養殖されているということなんですよね」
狩猟区内の動物が減少した結果、例えば南アフリカに養殖専用の農場が生まれ、ブレスボックやスプリングボック、ヌーなどの動物が養殖され、狩猟が許可されている各国の狩猟牧場に売られているという。
「だから、養殖された動物は人が怖くないんですよ。野生の勘みたいなものもなくて、簡単に殺せちゃうらしいんですね。私は『それってどうなの?』と思います。でも、それも許容できるという人もいるでしょうが、私がもっと問題視しているのは、新種の動物の養殖なんです」
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『サファリ』
1月27日(土)よりシアター・イメージフォーラム、2月3日(土)よりシネ・リーブル梅田、2月10日(土)から名古屋シネマテークほか全国順次公開。
映画公式サイト: www.movie-safari.com
1月27日(土)よりシアター・イメージフォーラム、2月3日(土)よりシネ・リーブル梅田、2月10日(土)から名古屋シネマテークほか全国順次公開。
映画公式サイト: www.movie-safari.com
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