ニュース

三浦瑠麗氏「スリーパーセル」発言を読み解く。北朝鮮の破壊工作への警戒心は必要

日本政府も「潜伏する工作員」を認めている

 何よりも北朝鮮が「潜伏する工作員」を日本に送り込んできていることは、日本政府も認めている「事実」なのだ。  平成29年版警察白書にはこう記されている。
《北朝鮮は、我が国においても、潜伏する工作員等を通じて活発に各種情報収集活動を行っているとみられるほか、訪朝団の受入れ等、我が国における親朝世論を形成するための活動を活発化させている。  朝鮮総聯は、28年2月、外為法違反事件に係る警察による朝鮮商工会館に対する強制捜査に関連し、機関誌への批判文の掲載等の抗議・けん制活動を行った。また、各種行事等に我が国の国会議員、著名人等を招待し、北朝鮮及び朝鮮総聯の活動に対する理解を得るとともに、支援等を行うよう働き掛けるなど、我が国の各界関係者に対して、諸工作を展開している。  警察では、北朝鮮による我が国における諸工作に関する情報収集・分析に努めるとともに、違法行為に対して厳正な取締りを行うこととしており、28年までに53件の北朝鮮関係の諜報事件を検挙している。》

 しかも北朝鮮の核ミサイル危機の中で、「北朝鮮による破壊工作の危機は高まっている」というのが日本政府の見解だ。  昨年11月27日、警察庁の坂口正芳長官は都道府県の警察のトップが集まる「全国警察本部長会議」において、核・ミサイルなど北朝鮮の脅威が増しているとして、「緊急事態の発生時に迅速かつ的確に重要施設の安全確保と、国民の保護等の措置を講じることができるような十分な備えをされたい」と指示した。この警察庁長官の発言は各テレビ局も一斉に報じている。  昨年来、日本海の沿岸で北朝鮮の漂着船が多数発見されており、北朝鮮の工作員が日本に入り込んでいると考えるのは当然のことだ。しかも発電所や空港、鉄道施設などが破壊された場合、その影響は極めて甚大だ。  警察庁長官の指示を受けて今年2月15日には、「強力な武器で武装した外国工作員が侵入し、首相が自衛隊に治安出動命令を出した」との想定で陸上自衛隊と茨城県警が、ひたちなか市東石川の陸自勝田小演習場や周辺で共同訓練を行った。事態は緊迫しつつある。  繰り返すが、国籍や政治的主張などを理由に安易に他人を「工作員」扱いすることは厳に慎むべきだが、「北朝鮮など外国による破壊工作は今後起こりうることだ」という前提で、警戒態勢を強化することは重要だ。  しかもその警戒心は警察や自衛隊だけでなく、われわれ国民の側にこそ必要なのだ。というのも重要施設などへの破壊工作を抑止する一番の力は、地元住民の「関心の強さ」なのだ。不審人物などへの警戒心を地元住民が持つようになれば、それだけでテロを含む破壊活動を抑止する大きな力となる。  我々の安全を守るためにも、三浦氏の発言を契機に、テロを含む破壊工作などへの「健全な」関心を高めていきたいものである。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保

経済的安全をいかに守るか?


経済的安全をいかに守るか?実践的な入門書が発売!

 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
1
2
おすすめ記事