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「性犯罪者にGPSをつけろ」論の間違い。厳罰化だけでは防げない

 毎日のように報道される、子供を狙った性犯罪。5月には新潟と岡山で、女児殺害の容疑者が逮捕された。どちらの容疑者も、同様の性犯罪を何度か犯しており、またも「鬼畜には厳罰を!」という声が高まっている。
夜の街

写真はイメージです(以下同)

GPSは、犯罪後の捜査に便利なだけ

 こういった事件のたびに、精神科医で「性障害専門医療センター」(SOMEC)代表理事・福井裕輝氏のもとには取材が殺到する。だが、聞かれるのは、「ミーガン法のような情報公開が必要なのでは?」「GPSつけたらどうですか?」。同じことの繰り返しだという。 ※ミーガン法:性犯罪で有罪となった者の住所や顔写真を登録し、出所後もウェブサイトなどで公開する法律。1994年、米国ニュージャージー州で成立し全米に広がった。 GPS:性犯罪者にGPS機器を付けることを義務づけ、行動を監視するシステム。米国の多くの州、イギリス、フランス、韓国など数か国で導入されている。   「GPSもミーガン法も1980年代から議論されている。日本は30年、遅れています。そして、どちらも再犯防止には効果が低いことがわかっていて、海外では監視よりも『治療』を優先する流れになっているんです」(福井氏、以下同)  たとえばGPSは、その人がいる場所がわかるだけ。犯罪を犯したあとの捜査には便利だが、事前に防ぐことはできない。 「海外に行くとよく言われるんです。『日本の制度はシンプルだね』と。警察が捕まえ、執行猶予になったり、実刑になっても一定期間で出てきて、再び犯罪を犯す――。ただただ後追いをしているだけで、事前の防止策をやっていない。  小児性愛者は人口の5%いるとされます。他の性犯罪につながる性嗜好障害という病気を抱えた人を加えたら、周りにいっぱいいる。いくら懲役刑にしても、何年かしたら出てくるわけですから、その発想自体が変わらないと難しいですよ」  前回前々回の記事では、「小児性愛など性嗜好障害は病気であり、治療はできる」という福井氏に、その治療法を取材した。薬物療法(性欲を抑える)と、認知行動療法(犯罪を起こしてしまいそうな行動ひとつひとつにストップをかける訓練)で治療は可能だという。
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刑務所での“治療”はなぜ効かなかったのか
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