「北朝鮮の非核化はポーズ、トランプはダマされたフリ」というシナリオ
歴史的な米朝首脳会談から1カ月以上が過ぎたが、北朝鮮の非核化のプロセスは不透明であり、まったく進展の兆しすら見られない。しかし、米朝首脳会談開催に一役買った韓国の文在寅大統領は、なぜか達観している行動を韓国国内で見せている。そして、金正恩は本当に非核化する気はあるのか、非核化が進まないことで痺れを切らしたアメリカによる軍事攻撃は実際にあり得るのかなど、最新刊『金正恩が脱北する日』を上梓した元韓国国防省北朝鮮分析官の高永喆氏と、産経新聞ソウル駐在特別記者兼客員論説委員の黒田勝弘氏に話を聞いた。
高:7月6、7日と2日間にわたり、アメリカのポンペオ国務長官が平壌に3回目の訪問をしましたが、具体的な成果を上げることができませんでした。しかも北朝鮮はアメリカの非核化の要求を『一方的な強盗のようだ』と激しく非難しています。アメリカ国内でも、喫緊の課題である北朝鮮の非核化が進んでいないため、米朝首脳会談は『完全かつ取り返しのつかないミステイク、CVIMだった』と皮肉な言い方をされています。そこで韓国に30年以上滞在している黒田さんにまずお聞きしたいのは、トランプと金正恩を引き合わせた韓国の文在寅大統領についてです。どう評価されていますか。
黒田:文在寅は、コーディネーターとして運転席に座り、米朝首脳会談を開催させた立役者です。しかし、北朝鮮の非核化に向けた具体的なプロセスがなかなか決まらないため、運転の仕様がなくなり、今はその運転席から下りている状況でただ傍観する『楽観的な評論家』のようになっていますね。文在寅政権は『金正恩の非核化の意思は間違いない』と思い込んでいますが、韓国国民は過去の数多くの裏切りを経験してきていますので、まだ半信半疑といったところが現状ですね。
高:米朝首脳会談から1カ月経っても、まったく物事が進んでいませんが、確かなのは、トランプが『北朝鮮に対して軍事攻撃はしない』とはっきり宣言したように朝鮮半島での戦争の可能性がかなり低くなったこと。それは国際社会的にも大きな成果であり、韓国が果たした功績と言っていいでしょう。保守系の野党は北朝鮮の非核化に対して半信半疑ですが、一方リベラル系の文在寅政権は、北朝鮮の非核化に関して非常に楽観的に考えていますね。
黒田:『捕らぬ狸の皮算用』ということわざがあるように、韓国では非核化の実現を前提にした南北交流、たとえば南北鉄道連結や韓国の児童生徒の北朝鮮への修学旅行などといった話が真面目に出ています。もともと、何事でも楽観主義の人たちですから、気楽な話ばかりでかなり緊張感が抜けている感じですね。
北朝鮮の非核化を楽観的に捉える文在寅
1
2
『金正恩が脱北する日』 元韓国国防省北朝鮮分析官が暴く緊迫の半島情勢!6月12日に行われた米朝首脳会談の最新情報も収録。 |
ハッシュタグ