男のDV被害は想像以上に多い「言葉の暴力は女性のほうが圧倒的に加害者です」
DV被害は今や女性だけのものではない。異性に暴力を受けていることを口外しにくい男性のDV被害が深刻化しているというのだ。今回は、DVやモラハラ被害に対して、カウンセリングやシェルターなどの支援を行っている「日本家族再生センター」の代表兼カウンセラーである味沢道明氏にその実態を聞いた。
――男性のDV被害はどのようなタイプが陥りやすいのか?
味沢:被害者に限らず、加害者も真面目な人が多いです。それに、自我が弱い人も多いですね。相手女性の暴力的な言動に対して、辛抱して我慢してしまうんです。そして、被害を受けているうちに、また相手に怒られるんじゃないかと思い言い返せない心理になっていく。相手にコントロールされる心理になっていくわけです。内にこもって、「俺はダメなんだ」と我慢してしまうんですね。
年齢的に言うと、被害を受けやすいのは30代後半から50代ぐらいまでの現役世代。ちなみにこれは、DV加害者側になる男性の年齢も一緒ですね。
――そもそもDVといえば、女性が被害を受けているイメージが強いです。DV加害者の男性とはどういった人たちなのでしょうか?
味沢:男女の役割意識を強く持っている人ですね。男の子だからこうしなければいけない、勉強していい会社に入るべきということを親や周りに言われて、それを忠実に守って努力してきた人。男性役割、父親役割など、自分の中で決まっている人。そんな人たちは、「負けてはいけない」「バカにされてはいけない」と思って生きてるんです。そんな男性が妻に『何この給料?』みたいな感じでバカにされると、最初は傷つきますが、「負けてはいけない」という防衛の思いから、やり返してしまうんです。攻撃することで自分を守ってしまうのです。ただ、加害者と被害者を類型的に分けることは簡単ではありません。ラベリングすることは、実はあまり意味がないんですよ。
――DV被害者・加害者ともになぜ周りは気が付かないのか?
味沢:社会に過剰に適用している場合が多いからです。仕事ができる人、うまく社会に適用している真面目なタイプが多いので、表面化していかないんですよね。
――相談には、どのような実例があったか?
味沢:ある男性は妻に激しく殴られて頭に大ケガを負っていました。もっとエスカレートしたら本当に殺されるかもしれないと思って相談に来られたそうです。毎日暴力を受けて、殺されるかもしれないと逃げてきた人もいました。
さらに、男性が加害者になったほうでは、被害者の妻が夫からこんな暴力を受けていると相談に来ることもあります。「どこに行ってもDVは直らないから別れろ」と言われるんだけど、離婚はしたくないんです。そんな被害者から、加害者につないでもらうケースもあります。
妻にコントロールされる夫たち
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