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西成は「外国人バックパッカーの街」へと変貌したのか?

クリーンに変わろうとするなかで問題は山積み

 ひと昔前とは異なり、外国人が訪れるようになったことは事実だが、いわゆる旅行者の街との違いはなにか。 「旅行者の街というよりかは、まだまだ肉体労働と生活保護の色が濃いと率直に感じました。それに、海外の安宿街では、怪しい売人が近寄ってくるので、“クスリ”を目当てにしている人も少なくない。西成にもそんなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、外国人観光客が気軽に手に入れられるのかといえば、それは難しい。そのへんに警察がうじゃうじゃいますから。先ほどのムスリムもそうでしたが、外国人観光客が訪れる理由は単純に宿が安いというだけですね」  とはいえ、現在の西成には小洒落たBARが店を構えるようになり、高級ホテルの星野リゾートまで進出しようとしている。それに伴い、あいりん労働福祉センターの立て替えが計画されるなど、行政を含めてクリーンなイメージに変わろうとしているが……。 「以前は『絶対に近寄ってはいけない』などと言われていたと思います。今でも治安がよくない場所もあることは事実ですが、なにも知らない観光客でも街歩きができるようになった。よく、日本人の観光客が『西成だ、すげー!』とか言いながら、物珍しそうに歩いていましたね。ただ、いち労働者として街に溶け込んでいた私のことを、蔑むような目で見てきて……いたたまれなくなることもありましたが(苦笑)」 國友公司 少しずつ街並が変わりつつあり、一般の旅行者も増えているようだが、國友氏は「難しい側面が残っている」と話す。 「クリーン化の一環として、外国人を呼び込んで“旅行者の街”として謳おうとしているのかもしれませんが、あいりんセンターの移設に対して住人の反発もあります。たしかに、1泊1000円ぐらいのドヤはもちろん、快適に過ごせるビジネスホテルまである。大阪観光の起点としては便利だと思います。ただ、そこは西成。そこそこのホテルの内部で、注射器を見つけたこともあります。たとえ小綺麗に変わっても、見た目だけでは判断ができないことだってある。この街には魔力みたいなものがあって、長期でいる場合は引き込まれないように注意してほしい。元ヤクザや薬物中毒者、普段は表社会には出てこないような……まだまだ良くも悪くもなんでもありますから」<取材・文・撮影/藤井敦年>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活
ヤクザ…、指名手配犯…、博打場…、生活保護…、マイナスイメージで語られることが多い、あいりん地区。ここで2カ月半の期間、生活をしてみると、どんな景色が見えてくるのか? 西成の住人と共に働き、笑い、涙した、78日間の体験ルポ。

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