モテる営業、モテない営業――「お金0.0」〈第27回〉
Aさんに言われたとおり、「写真撮ります!」と声をかけ始めてすぐ、僕はお客さんよりも自分の内面の変化に気がついた。なんというか、後ろめたさが一切ない。そしてお客さんも自然と心を開いてくれて、僕に笑顔で話しかけてくれて、初めての売上が上がったあとも立て続けに3組の方にご乗車いただいた。なんだこれは。これがモテるということか。
達也「ただいまもどりましたぁ!」
A「オツカレー」
達也「聞いてくださいよ。ぼく、もうモテモテだったんですから。みんな写真撮ってあげるっていうとほんとに喜んで、僕まで写真撮ってもらっちゃったり、修学旅行の女の子たちなんかみんなでお金出し合って乗ってくれたりしたんです。重かったけど」
A「よかったなぁ。喜んでもらえた?」
達也「えぇとっても!なんだか自信がつきました!」
A「ナニヨリ。そのまま続けていくといい」
達也「はい!!!」
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次の日
達也「写真とりますよ!どうですか!いや人力車乗らなくても!写真だけでも!」
娘AB「ほんとですかぁ〜!じゃあおねがいします!」
達也「はいいきますよー!いいですねー。はいちーず。はい。いい写真が撮れました!良い旅を!」
怖兄「おい」
達也「あ!おはようございます!!!」
怖兄「おはようございますじゃねぇよ。おまえ、なにしてんだよ」
達也「え?いまですか?写真撮ってあげてました」
怖兄「おまえ馬鹿か。お前が人力車乗んなくていいっつってっから写真だけ撮って全然乗らねぇじゃねぇかよ」
達也「え!!!関係ないですよ!実際みなさんに喜んでもらえてますし!」
怖兄「おい馬鹿。俺たちはボランティアじゃねぇんだよ。タダで客喜ばしてどうすんだ馬鹿。おい」
達也「いいじゃないですか!僕のところは喜んでくれてから乗ってくれる人だっていますよ!一方的に売り込むだけで断られたことを僕にあたるほうがおかしいと思いませんか!!!」
怖兄「おーおーおー。そうか。すげぇなおまえ。ちょっとこっちこい」
達也「え。あの。痛い。腕掴まれるとあるきにくいです。ちょと、すいません。痛い痛い痛い」
次号へつづく(いでの・たつや) 1994年、兵庫県生まれ。元かけだし俳優、高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラ出演やアルバイト勤務を華麗にこなし、たまたま仮想通貨で得た大金を秒速で盗まれる。Twitterアカウント(@tatsuya_ideno)
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