あなたは現在、自分が受け取っている年収の額についてどう感じているだろうか? その多寡に限らず、認識と現実とにギャップを抱えている人は少なくないだろう。
現在の「自分の値段」や会社の行く末に不安や疑問を抱きながらも、「年齢的に転職するには遅すぎる」「リスクがありすぎる」と戸惑う中高年も多いだろう。これに対して、「転職は細かいテクニックや求人情報を気にするより、思考法を確立することが大切」だと指摘するのは、発売2か月で10万部のベストセラーとなった『転職の思考法』の著者である北野唯我氏。大手広告代理店をわずか3年で退社。その後、アメリカや台湾など海外放浪を体験したのち、コンサルティング会社を経て、現在は人材ポータルサイトの運営などを手掛ける「ワンキャリア」の執行役員を務める異色の経歴の持ち主だ。自らもキャリアを模索した経験を持ち、今は人材業界の最前線で働く北野氏に転職に向き合う際に軸とすべき思考法を聞いた。
北野唯我氏
「キャリアの後半戦」にどう向き合っていくべきか?
――まず、中高年が将来の行く末に不安を感じた際、最初にどんな行動をとるべきだと思われますか。
北野:一度会社という枠組みから離れて、自分のキャリアの棚卸しをしてみてほしいですね。うわべの転職情報に惑わされるのではなく、自分にはどんな強みがあり、何をやりたいのか。何が好きなのか。そして、今後の人生をどう考えていくのか。その上で、どういうキャリアをつくっていきたいのかを考えるべきですね。
――棚卸しをするときは、どんなポイントを重視すべきですか?
北野:僕はキャリア形成において、「20代は専門性、30代は経験、40代は人的資産を養うこと」が重要だと思っています。まず、「専門性」とは、営業やマーケティング、会計などといった職種に近いものです。続いての「経験」は「リーダー経験がある」「営業開発」など、職種に紐づかない技術のこと。このようにほかの会社でも応用できる専門性と経験を、説得力を伴ってレジュメ(履歴書・職務経歴書)に書けるかが大切です。
――「40代は人的資産」とのことですが、これは具体的には?
北野:一言で言うと人脈ですね。「仮に自分が今の会社を辞めたとしても、自分に仕事をくれる人はいるか」が基準になります。
――個人として仕事を発注してもらえるかどうかが重要なんですね。かなり難しそうです。
北野:はい、なかなかそんな人はいませんよね。クライアント全体のうち、仕事をくれる人が5%もいれば、立派だと思います。
――実際の転職を考えたときは、どんな要素を持つ人が有利ですか。
北野:40代なら、何らかのプロジェクトや部署などのリーダー経験があること。マネジメントした人数は、できれば10人以上が望ましいです。10人という単位は、中小企業のひとつの事業部の規模とほぼ同じ。つまり、一つの部門をマネジメントした経験の有無が、大きな基準になると思います。
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<値段が上がり続ける人の特徴>
●キャリアの軸となる専門性がある
営業やマーケティング、会計、税務、プログラミング、デザインなど自らの仕事のコアをすでに確立させる必要がある。ただし、専門性一本で上り詰めるには飛び抜けたセンスがいるので、多くの人はそれ以外で補う必要がある
●マネジメント経験を重ねてきている
自らの値段を上げるにはプロジェクトを牽引できる存在であることが求められる。はじめは小さなチーム、小さなプロジェクトでも問題ないが、そうしてプロジェクトを回す経験を重ねていくことで、自らの価値が上がっていく
●自分がこれから得るべき経験が明確
「向こう1年はどういった経験を積むべきなのか」「今の自分にどういった実績が加わると、さらに『値段』を上げることができるのか」という視点を常に持つ。道筋を照らしてくれるエージェントがいると心強い
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