転職して年収が「上がる人/下がる人」の特徴
――マネジメント経験がない場合は、どういう戦略がありますか。
北野:経験がない場合、開発や広告、経理といった、ほかの業界でも通用する技術を持った人なら、スペシャリストとして転職できる可能性はありますね。あと、いきなり転職するのが怖いという人は、副業に挑戦するのも一案です。別に立派な売り上げや実績は必要なくて、仮に月に1万~2万円前後の売り上げでもいい。「お金をもらって何らかのサービスを提供した」という事実があれば、副業の収入自体は微々たるものでも、その人の市場価値に与える影響は大きい。キャリアのレジュメに色つけしたい人にはおすすめです。
――売上数万円の副業でもキャリアに影響を与えられるんですね。
北野:十分です。たとえば、新聞社の記者だけを15年間やっていた人が転職しようとしても、専門性がニッチすぎて、市場価値は低い。ただ、その人が「副業でネットニュースの記事も書いています」と言っていたら、「この人はネットのスピードにも対応できるんだな」「専門用語やニュアンスも理解できるはず」と連想されるので、キャリア構築には有利に働くと思います。
――主観的に自分で判断するのではなく、客観的に自分の市場価値を知る方法はありますか。
北野:第三者の意見として、転職エージェントの意見を求めるのも手です。ただ、転職エージェントもスキルは千差万別なので、社名ではなく、個人で見るべきですね。大手のエージェント会社に所属する人なら全員優れているかというとそうでもありません。転職する人の市場価値に合わせて、担当者の質は大きく変わりますので。
――有能なエージェントを見極めるには、どうしたらいいでしょう。
北野:本質的に転職エージェントの価値は、伸びている産業をマクロな視点で語れるかで決まります。「この業界でこの2~3年でどういう動きがあるか」「今、給与が一番高い求人はどういう会社のどういう職種か」などの質問をして、納得のいく答えをくれるエージェントなら信頼できます。
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<値段が下がり続ける人の特徴>
●数字で語れる実績を積み重ねていない
業務における自らの貢献度を他者とも共有できるようにしておく必要がある。転職を考えている場合はもちろんのこと今の会社に残り続ける場合であっても仕事の成果がどの程度のものなのかをきちんと整理しておく必要がある
●自分の職種と会社の強みが不一致
どの会社にも成長や売り上げを牽引する職種が存在する。そういった会社が持つ強みと自身の業務内容が一致すれば、自身の裁量がおのずと大きくなるため、仕事はしやすい。しかし、逆の場合は成果が極端に評価をされにくくなる
●会社を「居場所」と認識して死守する
今の会社に居続けることや、今の業務領域を守ることに心血を注いでしまうと、仕事において本当に大切な部分を見落とし、手段が目的と化してしまう。会社は自身の仕事をうまく回すための手段として利用する
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――今後のキャリアにおいて、「自分の値段」を損なわないために配慮すべきポイントはありますか。
北野:業界選びは非常に大切です。ひと昔前のスマホゲーム業界のように年々売り上げが伸びている「成長が見込める産業」、もしくは金融など一人当たりの売り上げが高い「生産性が高い業界」で働いている人は、給与の源泉となる粗利が多く売り上げがどんどん上がっていくので、市場価値が上がりやすい。一方、衰退産業で生産性が低い業界は、必死に頑張らないと売り上げを保つことができないので市場価値が下がりやすい。それだけ生産性が高く、成長がある業界を選ぶことが重要というわけです。
――中高年に差し掛かると転職自体、選択肢として考えにくくなり、検討するとしても最後の機会と考える人が多いように感じます。
北野:40代前後は仮に転職したくても、年齢的に子供がいたり、ローンを抱えていたりと、経済的リスクを取りにくい微妙な年代ですよね。特に新しい経験を得るための転職は往々にして年収が下がりがちなので、躊躇するかもしれません。でも、仮に一時的に給料が下がっても、自分のバリューを高める選択を取ったほうが、多くの選択肢を得ることができます。結果、長期的には市場価値も上がり、年収も上がるはずです。
――ということは、中高年でも「自分の値段」を高めるべく、新たな転職の一歩を踏み出すのは遅くはない……ということでしょうか。
北野:そうですね。多くの人は転職に失敗することが怖くてリスクを回避しがちです。でも、一番怖いのは、腹をくくるべきときに覚悟が決めきれず、後悔すること。一時の失敗も長い目で見れば失敗ではありません。最後に成功すれば、その失敗も「必要だった」と思えるはずです。だからこそ、年齢にこだわるのではなく、まずは行動すべきだと思います。
<「自分の値段」を高める3つの習慣>
・「専門性」「経験」「人的資産」の観点からキャリアを分析
・副業は目先の小遣い稼ぎよりもキャリアに色をつける手段にする
・目先の年収より選択するべき経験の機会を逃してはいけない
【北野唯我】
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。博報堂、ボストンコンサルティンググループを経て、’16年に人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画。著書『転職の思考法』(ダイヤモンド社刊)が10万部を超えるベストセラーに
<取材・文/高島昌俊 藤村はるな 撮影/岡戸雅樹 イラスト/市橋俊介>
― 自分の値段を査定せよ ―
最大のリスクは「腹をくくれないこと」
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