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自衛隊で取った資格は外ではつかえないことが多い!? パイロットも船も…米軍では有効なのに

「自衛隊ができない40のこと 40」
陸上自衛隊Facebookより

陸上自衛隊Facebookより

 自衛隊には「任期制自衛官(自衛官候補生)」という「ある一定期間だけ自衛隊に勤める」採用枠があります。任期が終われば一般企業に就職することが前提です。自衛隊はその性質上、若くて体力のある世代の人員をたくさん必要とするので、若い一時期だけ自衛官として働き、その後は一般企業で働いてもらうという自衛隊ならではの採用形式です。途中で試験を受け、任期制から曹に昇任することも可能ですが、任期を勤め上げ任期満了金(特例退職手当)をもらって別の道に進む人も多数います。  自衛隊は若い隊員をその時期だけ多数必要としていますから、期間限定の採用形態に応じる隊員のために、自衛官の募集パンフレットには、任期満了までに退官後の再雇用に有利な技術を習得できると書いてあります。  自衛官はその仕事に応じて様々な資格や免許、技術が必要になってきます。航空機のパイロットは航空機の操縦技術を学び、護衛艦などの船を操縦する人は、船を動かす技術を学びます。航空管制官は航空管制の技術を学びますし、武器弾薬を使うセクションでは危険物取扱に必要な技術を学ばないといけないでしょう。  こうした必要技術を身につけるために、自衛隊内には学校があり、自衛隊の外に出なくても技術が学べるようになっています。術科学校と呼ばれる自衛隊内の学校がそれに当たります。そこで様々な技術を学ぶのですが、自衛隊内での資格は、自衛隊外の免許制度とリンクしていないことが多いのです。だから、自衛隊の募集パンフレットには「様々な免許が取得できる」とは書かれていません。「免許取得」と技術習得では大きな差があります。再就職することを考えると、ただの技術習得では話になりません。

自衛隊のパイロットは航空法の適用除外

 米軍では、軍で取った免許はすべて民間でも有効です。国のために命を懸けた米国退役軍人には手厚くしてあげたいという考え方ですが、日本では逆に「税金で賄っているのだから自衛隊は我慢しろ」という感覚なのです。お国柄で全然違います。米軍で使っていた免許は、軍を辞めてもすぐに米国の企業で使えます。パイロットは空を飛べ、艦艇の乗組員は船を操縦できます。  しかし、自衛隊の技術習得は免許制度とは別物です。自衛隊内で習得した技術は、自衛隊から外に出ると免許として通用しないものが多いのです。この不思議な制度は早く解消すべき重要な問題です。  一例を挙げると、自衛隊のパイロットは航空法の適用除外であり、免許が無くても操縦ができるという仕組みです。だから、自衛隊以外で飛行機を操縦するには、計器飛行課程という自衛隊内の教育を受け、事業用操縦士の免許を取ることが最低限必要です(これは自衛隊内で免許取得が可能です)。ただし、これでは民間機の飛行機は操縦できません。
航空自衛隊Facebookより

航空自衛隊Facebookより

 さらに、民間機パイロットとなると、事業用操縦士の他に計器飛行証明、航空無線通信士、航空英語検定を持ってないとダメです。その免許すべてを国内で取得しようと考えると500万円から1000万円の大金を支払い、新たに免許を取る必要があります。航空機の操縦士不足問題の対処として、最も高額な費用の掛かる実機実習を免除し、官民での協定を結んで、一定数のパイロットを民間に登用する仕組みはできたようです。しかし、狭き門です。ヘリパイロットは別の仕組みですが、こちらも甘くはありません。せっかく自衛隊で得た高度な航空機パイロット技術が即座に実社会で役立てられないのです。  民間航空会社には自社養成で免許を取らせてくれた佳き時代もあったようですが、今はフルスペック免許がないと採用されないのが現状です。パイロットの再就職ハードルはトンデモなく高いのです。このような自衛隊内の技術(制度)と一般社会の免許制度の違いはあちこちにあります。
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パイロットだけではありません!
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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