安田純平氏への非難やまず…同胞の解放を“喜ばない”日本の自己責任論の異常さ――古谷経衡
麻生いわく「飲み倒して運動も全然しない人の医療費を、健康に努力している俺が払うのはあほらしくてやってられんと言っていた先輩がいた。良いことを言うと思った」。麻生はこの「先輩」の発言に完全には同意しないと説明したが、つまり「不道徳な野郎に俺のカネを使うな」という感覚で、これが世界中のネオリベの根底にある。
欧州の反移民感情にもこれと同じものがある。ネオリベは日米欧揃って中産階級以上で、会社経営者など地位の高い者が多く、父権性を重視する中年以上の男性に多い。だが欧米のネオリベも、海外で危険な目に遭った同胞を唾棄する姿勢はない。そういった意味で日本の自己責任論はネオリベの亜種の類いであり、20世紀以降の国民国家では類例を見ないほど異質な部族的・ムラ的閉鎖性を帯びている。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
’73年、カンボジアの内戦を取材中に殉死した戦場カメラマン、一ノ瀬泰造氏の死の前後の新聞を調べたが、記事は英雄視一色だった。たった50年とたたずして、日本社会はこんなにも部族的になったのだ。――いや、元来日本人は自力救済を旨とする剝き出しの自助社会という評価もあるが。1
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『シリア拘束 安田純平の40か月』 2015年6月に取材のためシリアに入国し、武装勢力に40か月間拘束され2018年10月に解放されたフリージャーナリスト・安田純平。帰国後の11月2日、日本記者クラブ2時間40分にわたる会見を行い、拘束から解放までの体験を事細かに語った。その会見と質疑応答を全文収録。また、本人によるキーワード解説を加え、年表や地図、写真なども加え、さらにわかりやすく説明。巻末の独占インタビューでは、会見後に沸き起こった疑問点にも答える |
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