更新日:2018年12月14日 22:05
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「発達障害者はコミュ障」なんて、ただの思い込み――光武克の「発達障害BARにようこそ」

 この日、カウンターで話していた山本さんと横山さん。お2人はもう何回目のご来店でしょうか?(笑) サラリーマンと公務員の二人組で、初めはお店で仲よくなって、いつの間にか最初から2人で飲んでいたかのような関係に変わっていました。 光武克の「発達障害BARにようこそ」第3回 最初は一人で来ていたのに、お店で何度も見かけるようになると、「また会いましたね」という会話に発展していくケースが多々あります。 山本「こないだ仕事のスケジュールをダブルブッキングしちゃったんだよね」 横山「わかる! 僕もそれ、こないだやっちゃいました!めっちゃ上司に怒られちゃいましたよ」 山本「まじかぁ。後処理は上手くいったの?」 横山「なんとか、周りの人に手伝って貰ってひーひー言いながら謝罪行脚ですよ」 山本「ご愁傷様……って、あれ?そっちのテーブルの人、大丈夫? おーい、よかったらこっちに来ませんか?」 光武「よかったらこちらにいらしてくださいよ。この人いつも失敗ばかりしている面白い方ですよ!」 山本「光武さん、その紹介はさすがにないですよ!!!」 遠藤「あの……わ、わたしも実は………」  こうして少しすこしずつですが、遠藤さんに笑顔が戻ってきました。よかったよかった。 山本「僕は山本って言います。こっちは横山さん。よかったらお名前うかがってもよろしいですか?」 遠藤「……遠藤です。話しかけていただけて嬉しいです。あの、本当にお邪魔じゃないですか?」 横山「何を言ってるんですか。ここはそういう人が集まる場所なんだから、ここで気を使っても仕方ないですよ。ね、光武さん。気を遣うのは光武さんの仕事でしょ?(笑)」 光武「お上手なことで。そうですね、裏方の仕事は僕にお任せください」 山本「光武さん、パッと見たら何でもできそうなのに、話聞くとポンコツなんですよ。そのギャップがお酒を進ませるんですよね、この店」 遠藤「……ふふふ」  実はこの時、一連の流れをテーブル席の片隅で、マティーニを飲みながらじっと観察していたもう一人のお客様がいらっしゃいます。心理学を大学で教えていらっしゃる斎藤先生です。彼は心底びっくりした顔で僕に感想を言ってきました。 斎藤「ASDの人が初対面の人とこんなに話せるなんて! そもそもコミュニケーションを取ろうとする願望が少ないと思っていたから驚きです」 光武「そうですね。僕は寂しがり屋だから特にそうなんですけど、ASDの傾向があっても、やっぱり人に共感してほしい、繋がっていたいという気持ちが強くありますね。逆に『誰かと繋がっていたい』という感情は人間皆が持つ普遍的なものなのかもしれませんね」  僕はBRATsでいわゆる机上の学問とは異なる現実の面白さを垣間見た気がしました。 「一般には〇〇と言われているけれど、実際は全然違った」  こんなことが発達障害に限らず、僕らの周りにはあふれているのかもしれません。こんな風にカテゴリーに当てはまらないものと出会ったとき、目の前の不思議さを大切にしてみる。これが「互いに尊重し合う」ということではないかと、僕は思います。  そしてこの緩やかなつながりによって、このBRATsという空間は成り立っている気がします。  笑顔が戻り、楽しそうに話をする遠藤さん。  その笑顔を見て自分も笑顔を共有している山本さんと横山さん。  そんなやり取りを見つめて興味津々な斎藤先生。  明日はどんな人が足を運ぶのかを考え、今日しかない時間を僕は大切にしたいと思います。  今回もご愛読ありがとうございました。それでは、またのご来店お待ちしております。 *お客側の登場人物はプライバシーの問題から情報を脚色して掲載しています。 <文/光武克 構成/姫野桂 撮影/渡辺秀之>
(みつたけ・すぐる) 発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター。昼間は予備校のフリー講師として働く傍ら、‘17年、高田馬場に同店をオープン。’18年6月からは渋谷に移転して営業中。発達障害に関する講演やトークショーにも出演する。店舗HP(brats.shopinfo.jp) ツイッターアカウント「@bar_brats
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発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害“ブーム"の裏で生まれる「グレーゾーン」に迫る


■姫野桂氏の新刊発売記念イベントが開催!
12月20日に姫野氏の新著『発達障害グレーゾーン』の発売記念イベントが開催される。特別協力として関わった「OMgray事務局」のオム氏、株式会社LITELICOの鈴木悠平氏を招き、3人が「発達障害っぽさを抱えて生きる方法」についてトークする。

【日時】12月20日(木)19時開演(18時45分開場)
【場所】神保町「書泉グランデ」7Fイベントスペース
【参加方法】姫野桂 著「発達障害グレーゾーン」(820円・税別)を1Fでご購入いただいた方に、参加券を配布(定員50名)
【予約】電話(03-3295-0011)・メール(grande@shosen.co.jp)で予約可能
*詳しくは書泉グランデHPで(https://www.shosen.co.jp/event/89535/
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