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M-1はなぜ霜降り明星が優勝したのか? ユウキロックがM-1グランプリ2018を総括

 平成最後の大会で、初の平成生まれの王者が誕生した「M-1グランプリ2018」。2013年結成の若手コンビ「霜降り明星」が実績十分の先輩芸人たちを下した要因はどこにあったのか? 自身と「M−1」の浅からぬ縁を綴った自叙伝『芸人迷子』が大きな話題を呼んだユウキロック氏がその勝因を分析。ツイッター解説が今年も注目を集めた元ファイナリストに改めて振り返ってもらった。

霜降り明星

M-1グランプリ2018優勝 霜降り明星(撮影/岸豊)

「ラストチャンスが叶わない」という残酷さ


 今年の「M-1グランプリ」は敗者復活戦から熱かった。決勝進出メンバーが順当な選出だっただけに、誰が出てきてもおかしくない。今回から準決勝の成績が下位のコンビから登場するというシステムを変更し、16組がくじ引きで出番順を決めることとなった。その結果、準決勝で出来がよかった「マヂカルラブリー」「プラス・マイナス」がそれぞれ13番手、15番手と好位置を射止め、トリの16番手はボケ数も多くパワープレイも得意な「インディアンス」が務めることとなった。敗者復活戦はネット投票より「面白かった3組」を選出され、そのトップが勝者となり、決勝に進む。

ミキ

ミキ (c)2018 M-1GRANDPRIX、(c)ABCテレビ/吉本興業

 最初にお客さんを掴んだコンビは4番手に登場した昨年のファイナリストである「ミキ」だった。彼らは若手の中でもトップクラスの人気がある。こういった投票では「人気」があることがやっかみの対象になるが、「人気」というのは今まで築いた「信頼」であり、それが投票に反映されることは当然であるし問題ではない。そんな、彼らは準決勝のネタから、二人の攻防がより激しく、笑いも多いネタへと変更。途中、トラックが大きな音を立てて走り去るというアクシデントもしっかり笑いに変えるあたり、さすがである。数多くの舞台や営業を重ねてきたからこそなせる技だ。そして、「人気」だけではなく自らの力で勝利に近づいた。

 8番手の「金属バット」がネタ、その後の絡みとビッグインパクトを与えたが、「ミキ」に迫るまではいかない。「マヂカルラブリー」も決定打を欠いた印象だ。「ミキ」が完全に逃げ切り大勢に入った中、15番手に「プラス・マイナス」が登場。準決勝で披露したネタでもよかったと思ったが、ここで披露したネタが普段からやり慣れている「プラス・マイナス」のオールスターのようなネタだった。「M-1ラストイヤー」にすべてを出し切り、完全に「ミキ」に迫った。

 そして、トリに登場した「インディアンス」。準々決勝は最高の出来だったが、準決勝でのネタはお客さんをハメきれずに決勝のチケットは掴めなかった。そこで彼らが披露したネタが準々決勝で披露した「元ヤンキー」からなるネタだった。しかし、このネタ、前日にフジテレビで放送していた「THE MANZAI 2018 プレマスターズ」でやっているではないか!! 先日の記事に書いたように、昨今の「M-1」は「戦略」が必要であり、「ネタバレ」を最小限に防ぐことも重要である。ちなみにその番組には決勝メンバーである「和牛」「ゆにばーす」「霜降り明星」も出演していたが、決勝で披露したネタは一切していなかった。それが理由かはわからないが、「インディアンス」は敗れ去った。

 決勝開始直前に発表された敗者復活戦の結果発表。決勝進出へのチケットは最終的に「ミキ」と「プラス・マイナス」の2組に絞られた。俺は心情的に「M-1ラストイヤー」の「プラス・マイナス」に、決勝の舞台に立たせてあげたいという気持ちがあった。こういう立場にもかかわらず、今回ばかりは投票に参加しようかと思ったぐらいだ。しかし、結果は「ミキ」。「努力は必ず報われるわけではない」。何度も経験し言い聞かせた言葉だ。それでも舞台に立ち尽くす「プラス・マイナス」を見て、「ラストチャンスが叶わない」現実が、俺の背中に重くのしかかった。こんな「M-1グランプリ」は初めてだった。

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辛辣なコメントが相次ぎ、重い空気が流れたファーストラウンド

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芸人迷子

島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。

⇒試し読みも出来る! ユウキロック著『芸人迷子』特設サイト(http://www.fusosha.co.jp/special/geininmaigo/)





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