更新日:2019年01月08日 18:35
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「アルファードのほうがよっぽどクラウンらしさを感じる」クラウン好きによる新型クラウン評

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。私は腕時計とクルマが好きなのですが、どちらも買った値段より高く売るか、購入額に近い額で売却することを心がけています。そういう消費スタイルを貫いた結果、これまでに中古のロールスロイスを始め、数十台クルマを乗り継いできました。  高級レストランに行く機会が増えると舌が肥えてくるのと同じように、様々なクルマを所有すると、良いクルマの傾向がわかってきます。  では私はどんなクルマが良いと思ったのかというと、意外にも一般的な「クルマ好き」からはそれほど評価の高くない、クラウンというクルマが素晴らしいということに気づいたのです。

筆者の愛車・11代目クラウン・エステート

 さて、クラウンといえば、最近新型が登場しましたが、その新型はいったいどのようなクルマとなっているのでしょうか? その評価をするためには、これまでに販売された素晴らしいクラウンと比べてみるのがわかりやすいといえます。  ということで今回は、クラウン好き&旧型オーナーの目線で、新型クラウンをこれまでの主なクラウンと比較してみました。  比較対象は、以下の3台です。 ●エントリーNo.1 8代目クラウン(13系)  8代目クラウンは、これまで最も売れたクラウン。そして、「クラウンといえばこれ!」というほどクラウンらしさが強い印象です。 ●エントリーNo.2 11代目クラウン(17系)  11代目クラウンは、「ロイヤル」「アスリート」という2部構成となった初の世代。アスリートシリーズの初代では、それまで無縁だったスポーツ要素を積極的に取り入れました(※「アスリート」は1グレードとして7代目、8代目にも存在)。 ●エントリーNo.3 13代目クラウン(18系)  ゼロクラウンとしても有名なこのクラウン。「いつかはクラウン」という7代目の有名なキャッチコピーを「このクルマがスタートとなる」と書き換えたのは、宣伝文句だけでなくクルマ本体を見てもわかります。この世代が、クラウンシリーズのモダンとクラシカルの分かれ目だといえるでしょう。

右から新型、12代目、11代目エステート、8代目のクラウン

新型からクラウンらしさは感じられたか?

 8代目クラウンを“クラウンらしさ100”だとすると、新型はらしさが10もないかもしれません。「クラウンらしくない」と言われたゼロクラウンですら、こうして4台を見比べてみると、「まだクラウンだったのか」と思うほど、新型にはクラウンの面影がありません。  新型は王冠エンブレムが目立つため、かろうじて新しいクラウンだと認識できますが、要素としてはまったくクラウンらしさがないといえます。

フロントエンブレム 左上:8代目 右上:11代目 左下:12代目 右下:新型

走りの質感を比べてみると……

 このクラウンらしくないという点は、走りでも強く感じることができます。「クラウンの走り」といわれると、あまり良い印象がないため、ここはクラウンらしくなくて逆に良いかもしれません。  新型は、かつて走りが評価されたゼロクラウンよりも、さらに走りが良くなったと感じました。例えば、安心して曲がれるカーブの速度域は、ざっと時速10kmほど伸びていると感じます。  プロドライバーによる筑波サーキットのラップタイムでは、ゼロクラウン(3リッター)で1分11秒台ですが、13代目クラウンの3.5アスリートは1分10秒を叩き出しています。

デビュー年は、左から、昭和62年、平成11年、平成15年、平成30年となる

 ゼロクラウン以降のクラウンは、かなり良い走りをするため、いくら「ニュルで鍛え上げた」と言われても体感できるほど良くするのは困難だと思いました。しかし、それがかなり良くなっているので驚きました。  また、シートもとても良く、ドライビングポジションを神経質に調整しなくとも快適に運転できました。新型以外の3台は、やや寝そべった姿勢がベストとなるようなのですが、良いポジションを見つけるまでには時間を要します。

運転席 左上:8代目 右上:11代目 左下:12代目 右下:新型

乗り心地はクラウンだったか?

 ニュルで鍛え上げたというのは、良い乗り心地にもつながってくる部分だともいえます。クラウンといえば、乗り心地を重視した一方、走りは犠牲にしてきた歴史がありますが、走りを重視したゼロクラウンは、乗り心地が悪くなったといわれます。  ゼロクラウンの乗り心地の悪さは、運転しているとそれほど気にならないのですが、助手席や後席だと強く感じます。路面状況が良いと氷の上を滑るようなのに、少しでも段があるとゴツンという衝撃を受けるのです。

各車両の年式は、左から、平成2年、平成15年、平成17年、平成30年

 しかし、新型では運転していても、助手席に乗っていても、そういったゴツンという感じは受けず快適な乗り心地が実現されています。ですから、新型は走りと乗り心地の良さ、どちらも実現しているのです。

クラウンらしい高級感は感じられる?

 このように、質の良い走りと、良い乗り心地を実現しているクラウンですが、新型は高級感では歴代クラウンに劣ります。これまで、トヨタの内装は「わからないようにコストダウンするのがうまい」とも揶揄されましたが、新型クラウンはコストダウンをはっきりと感じます。

インパネ 左上:8代目 右上:11代目 左下:12代目 右下:新型

 もっともクラウンの内装は、先代(14代目)からコストダウンが目立ったため、これは新型だけのマイナスポイントではありません。  例えば、歴代クラウンとドアパネルを比べるとコストダウンされたのがとってもよくわかり、ヴィッツなど大衆車クラスと同様の硬いプラスティックが目立ちます。11代目やゼロクラウンでは、物入れが可動式だったのが、新型では一体形成の硬いプラスティックに。また、Bピラーの下部分も同様で、11代目などより質感が劣ります。  ゼロクラウンでも硬いプラスティックを用いた箇所はありましたが、本革風のシボが施されていました。硬いプラスティックでも、そういった形状だったならば、高級車らしい高級感が演出されたのではないでしょうか。

ドアパネル 左上:8代目 右上:11代目 左下:12代目 右下:新型

 また、コストダウンされたのは内装以外にも見られます。  例えばドアヒンジは、8代目ではプレス製だったのが、11代目とゼロクラウンは鋳物製に進化。それが新型ではプレス製に退化しているのです(GSやLSなどレクサスの現行モデルは鋳物製を採用)。
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余計なものが減った新型クラウン
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1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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