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「首都高の壮大な料金実験の場」として2020年東京オリンピックを活用すべし

 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催中の渋滞緩和のため、東京都や国、大会組織委員会は、首都高に時間帯別料金を導入する方針だと報道されている。大会期間中には、関係者の輸送が多い時間帯の通行料金を上げる、一種の「ロードプライシング」である。

オリンピック道路とでも言うべき首都高晴海線「豊洲‐晴海間」

 個人的には、首都高の時間帯別料金について、2011年刊の拙著『首都高速の謎』で、すでに導入を提案している。混雑する時間帯の料金を上げ、空いている時間帯の料金を下げれば、混雑を多少なりとも平準化することができるのだ。  現状、首都高で渋滞が最も激しいのは夕方、午後5時から7時くらいの間。この時間帯になると、渋滞表示が急激に真っ赤になり、午後8時を過ぎると急激に引いて行く。夕方ピーク時は、首都高でも下道でも所要時間にほとんど差がなくなってしまう。これでは有料道路の意味がない。  夕方の料金をある程度高くすれば、首都高の交通量はそれなりに減り、下道に移るはず。その分下道の混雑は増すわけだが、「お金を払って時間を買う」ことはできるようになる。混雑ピーク時の前後時間帯を割引すれば、移動の時間をずらす動機も強まる。これは資本主義原理に忠実な、ごく自然な交通政策だ。

金曜日夕方の首都高(1月25日18時30分時点)。首都高技術の道路交通情報サイト「mew-ti」より

オリンピック期間限定なら思い切った料金変動も許される!?

 いっぽう、東京オリンピック開催時の渋滞対策だが、こちらに関しては、まったく心配していない。なにしろ半世紀に1度?のビッグイベントだし、期間は17日間。それくらいなら、交通規制でなんとでもなるはずだ。  大会組織委員会と東京都は、「交通対策を行わない場合、 首都高の渋滞は現況の約2倍近くまで悪化する」と予想しているが、それはあくまで何もしなかった場合。何もしないで許されるわけがない。運送業者にも、少なくとも大手には全面協力を要請して、かなりの対策を打てるはず。特に首都高は、いざとなれば入口閉鎖が簡単にできるし、警察による交通規制も容易だ。オリンピック期間中、大会関係者のために首都高をスイスイ動かすのは、決して難しいことではない。  つまり、オリンピック開催時には、ロードプライシングを導入しなくても乗り切れると私は見ているが、オリンピック期間限定ならば、思い切った料金の変動も許されるはず。つまり、社会実験の実施には打ってつけの機会だ。  報道によると、「現行料金のおよそ2倍」も想定されているというが、日時によっては、ぜひ実行してもらいたい。もちろんずっとではなく、たとえば「7月30日の何時から何時まで」といった限定で。  料金が2倍になれば、交通量はガックリ落ちるはず。おそらく2~3割減るだろう。そこまで減れば、普段の日曜日より空いている状態になる。つまり渋滞ほぼゼロだ。正直、ここまでやる必要はない。料金が通常の5割増しでも、交通量は1割近く減るはずだ。1割減れば渋滞は半減する。それに入口閉鎖や交通規制を組み合わせれば、オリンピックは確実に乗り切れる。

首都高中央環状線「板橋-熊野町JCT」

 しかし、せっかくの機会なのだから、日時によっては大胆なロードプライシングを実施して、その効果を確かめるべきだ。こんな機会は二度とないのだから、オリンピック終了後の、恒常的な時間帯別料金の導入に生かしてもらいたい。
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

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