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タワマンの階層カースト、「挨拶」から「メルカリ利用」まで火種に

「メルカリで売る」と言ったら下層?

 前述のとおり、最上階の住人は万人に当たりがソフトなのに対し、中高層の住人たちのプライドの高さは突出している。  たとえば住人同士のコミュニケーション。これはマンション全体を維持管理していく上で非常に重要であり、交流があることは有益なのだが、その交流に際しても、「(旦那の)勤務先」や「役職」、乗っている車の「車種」、子供がいれば彼らに着せている服や自転車のブランドにまで話が及ぶ。少しでもマウントポジションを取ろうという情報戦さながらなのである。 タワマンカースト 子供服にいたっては、注意するのはブランド名だけではない。すぐにサイズオーバーになってしまうよねという話題で、「メルカリで売れるよ」とか「ジモティ(地元での交換・売買アプリ)で探せばあるよね」などと言おうものなら、その日から見下される危険をはらむ。実際はみんな利用しているのかもしれないが、会話には出すことはタブー視されているのだ。  会話に出さなくても、そのアプリ(メルカリやジモティなど)のショートカットがスマホの画面上に見えてしまうのもNGだ。パーティー中やエレベーター内では、スマホ画面に出る“気になる商品”通知のポップアップも含めて、見られないよう気を使うハメになる。  筆者の住むタワマンが過剰すぎるのかもしれないが、それが筆者の目から見た現実なのだ。  異性関係と同じく、金銭感覚のずれは付き合っていくには大きな負担となる。  同じマンション内では金銭感覚が同じほうが、管理組合の運営や修繕計画などもスムーズにいく。だが、タワーという構造は、フロアによって微妙に金銭感覚が違い、住人全体が一枚岩になりづらいのである。

挨拶でさえ、ままならないタワマン…

 不審者も多い昨今「知らない人に気軽に挨拶してはいけません」と教え・教わる悲しい時代だが、せめて同じマンション内くらい挨拶が飛び交ってもいいのではないか。できる人が率先して声を掛けていけばいい、それがいずれ広まればいい。  しかしそうはならない。「挨拶する・しない」までが、カースト意識に結びつけられてしまう。  特に、中高層の世帯が「下の階」にマウントするのは、そうしないと自分のポジションが認識できないという病に侵されていると見るのが妥当なのかもしれない。  タワーマンションが上へ伸びるにつれて増加する中高層の世帯の数だけ、自分を見失った人たちが増えているように感じるのだ。<TEXT/古川博之進>
タワマンに住む会社員。不動産業、マンション理事長の経験を元に主に不動産業界のテーマを執筆。年100回開催経験から合コンネタも扱うが、保護猫活動家の一面も持ち合わせている。
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