教師のブラック労働が改善されない理由 10年間で63人の過労死も…
教師が「聖職者」と崇められていたのも今は昔。近年は学校のブラック化が加速し、’17年に心の病で休職した全国の公立小中高校などの教師は5077人にのぼる。教師の側からの学級崩壊が進行中だ。
教育学者の内田良氏は、そもそも教職の給与体系自体がブラックな体質を内包していると指摘する。
「公立の小中学校で働く教員には、『給特法』という法律が適用され、給与月額の4%が上乗せ支給される代わりに残業代が出ません。要は、定額で働かせ放題なんです」
企業では、労働時間を減らして残業代を抑えるよう総務部から圧力がかかるが、学校では自浄作用が働かない。その結果、’06~’16年の間に、63人もの教員が過労死に追い込まれているのだ。
「小学校では英語やプログラミングなどが必修化されて研修が必要になり、一昔前と比べて教員の仕事量はかなり増えています。中学校では部活動の顧問や生活指導、学校行事などもこなさなければならず、授業や生徒とのコミュニケーションに支障をきたす事例も多々あるようです」
教員の労働環境が一向に改善されないのはなぜなのだろうか。
「教育現場では、長時間無給で頑張ってこそ一人前の教師という美徳・文化が根強い。若手の先生が定時帰りなどの新しい働き方を職員会議で提案すれば、古い価値観の先生たちから、ワガママだと吊るし上げられてしまいます」
だが、ここから抜け出そうにも、多くの教師には、逃げ場がない。
「モンスターペアレントや学級崩壊などに嫌気がさして辞めようと何度も思いましたが、30代半ば以降で転職できる先は塾講師ぐらい。教師はツブシが利かないのです」(都内の小学校教師A氏)
近年は、こうした過酷な労働実態が報じられるようになり、教師は敬遠される職業になりつつある。
「公立校の教員の志願者数は6年連続で減少しています。一方で、教員採用試験の倍率が1.2倍程度の自治体もあり、志の低い人でも簡単に教師になれてしまうという問題も出てきています」
年配教師はブラック労働を賛美し、若手は教育意識が低く、逃げ場のない中堅は絶望する。こんな場所で子供は何を学べるのか。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
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