巨大マンション群「晴海フラッグ」は買う価値あり?見学者殺到の理由とリスク
東京・中央区晴海エリアで進められている、分譲マンションの一大プロジェクト、通称「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」が今話題だ。
2020年の東京五輪・パラリンピックの選手宿舎を、五輪終了後に改装して、24棟・総戸数5632戸ものマンションとして一般向けに分譲するというこの計画。すでにモデルルームには見学客が殺到しているが、買う価値があるかどうかは様々な声が挙がっている。
このプロジェクトが注目を集めているのは、まず2点、“眺望の素晴しさ”と“スケールの大きさ”だ。
三面が海に囲まれた環境を作り出すことは容易ではなく、改めての広大な埋立地の造成には莫大なコストもかかる。5000戸超というスケールも含め、オリンピックという国際的なイベントが開かれなければこの発想には至らなかっただろう。商業棟を含めても20棟以上が立ち並ぶというのは、タワーでなくとも圧巻のスケールなのは間違いなしだ。
しかし、ネットで「晴海フラッグ」を検索すれば、出てくるのは厳しい声が目立つ。主な声は3つ。“駅から遠い立地”の指摘、“引渡しまでの期間の長さ”の指摘(それに絡む金利リスク)、そして“高すぎる価格”の指摘である。
まず最初に指摘されている“駅から遠い”という点だが、最寄り駅からの距離を見ると、都営大江戸線勝どき駅までが「徒歩20分」とある。これは不動産表記だろう、おそらく実際のところは30分弱と見てとれるが、これは確かに遠い。通常15分の距離になると自転車の利用を検討したいところであるから、それを超える場合は必須となるのかもしれない。「職住近接」を条件とするのであれば、中央区とその隣接区への勤務が前提なのである。
しかし、注目すべきはBRT(バス高速輸送システム)の稼動である。マンションスケールから見て、運べる定員が130名というのは若干心もとないが、虎ノ門方面行きで最終が新橋、それが10分圏内というのだから、乗り切れなければ次の便を待ってでも利用する価値は大いにあると判断できる。仕事以外で果たしてどこまで出て行く必要があるのか、これは入居する商業施設なども見てみないと分からないが。
そして、もうひとつ突っ込まれている“引き渡しまでの期間”について。来年のオリンピック終了後の工事着工が前提となるため、竣工は2022年秋、実質の入居可能時期は4年後になるという。これは、新築分譲でも例を見ない異例の長期間である。時間というのは短くても長くてもそれなりにリスクが付きまとうものだが、借り入れを前提とした場合には金利のリスクを考慮する必要がある。
ネガティブな意見が散見されるように、金利については、今が下がりきった特殊な状況なので、後は上がる可能性しかない。衣食住のひとつが定まりきらない恐れを抱き続けるのは精神衛生上よろしくないし、総返済額以前に、月々の返済が回らなくなるなんて目も当てられない。
ただし、これはあくまで、購入額の過半分のローンを組む場合に限られよう。つまり、頭金としてキャッシュをある程度突っ込むことで、そのリスクの軽減が可能となる。要は、どれだけの手元資産があるかではないか。この点は、次の“価格”の面にも派生する。
最後に指摘される“価格設定”だが、そもそもG.W.に公開された初期価格については、その発表前から様々な憶測があった。「選手村跡地の引き受けにより、破格の低価格で土地を入手できた」「それは販売価格にも反映されるだろう」という前情報である。その予備知識と期待感を持って見せられた価格が3LDKで8000万円ほど、4LDKで1億2000万円ほどであり、これに対しての「高い」という声が挙がっているわけだ。
しかしこれは決してミスリードではない。間取りの過半が85㎡超という非常にゆったりとした作りで、廊下幅も広めに設計されている。正直、内容を見た上で物件価格を精査すれば、それほど高くない、むしろ割安である。
特に注目すべきは、周辺の新築分譲マンションの価格である。この辺りで坪単価300万円を切ることはまず考えられず、物件によっては400万円近いものがあるくらいだ。もちろん晴海フラッグが豪華な内装を用意していれば、もう少し坪単価は上がってしまったかもしれないが、そこは標準的な仕様が採択されているようだ。これは億超えになる部屋の割合を調整したかったからではないだろうか。
ネットで目立つ3つの厳しい指摘
大事なのは、手元にどれだけの資産があるか
晴海フラッグは割安である
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タワマンに住む会社員。不動産業、マンション理事長の経験を元に主に不動産業界のテーマを執筆。年100回開催経験から合コンネタも扱うが、保護猫活動家の一面も持ち合わせている。
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