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働き方改革、女性活躍のモデルを巨大ラブホチェーンに見た/文筆家・古谷経衡

女性客への訴求はラブホの必須条件

 写真を観てわかるように、古臭い、旧態依然としたアイネの姿はどこにもなかった。部分的にアイネ時代の施設を継承したと思われる個所は見受けられるが、全体として「生まれ変わった」と形容して差し支えないであろう。  レスティグループ会長、宮原眞氏は、同公式HPにレスティのこだわりを次のように語っている。 “お部屋は完全に清潔を保つことはもちろん、丁寧なフロント対応でご要望をくまなくうかがいます。<特に、女性のお客様にご満足いただける空間・アメニティ・食・サービスの提供を>心がけ日々運営しています。「レステイクオリティ」を維持し高めるためには、社員同志が仲間として支え合い、想いを一つにすること。そのため、何よりも職場環境の充実に努めています。<女性の働きやすさも追求し、福利厚生の完備はもちろん、妊娠・出産後も働きやすい職場を整えています。現在、店長の6割は現地パートから採用した女性が昇進しています。>”  <>部分は筆者が強調したものである。この事からわかるようにもはやラブホ、女性客への訴求なしに成り立たなくなっていることを物語っている。また経営人事も刷新され、店長は女性目線に立った現地パート採用者は過半数を超えるという。まさに「働き方改革」「女性活躍」を絵にかいたようなラブホテルである。どこかの内閣は見習ってほしいものである。  おおむね、アイネからレスティに生まれ変わったホテルの内容は★4というところ。改装費用が客室に転嫁されているのか、やや相場から高い印象に映った。しかし往年のアイネを知る者からすれば、その変化のさまは瞠目に値する。国道沿いにレスティを見つけたならば、ぜひご一泊をすすめたい。 ●ラブホテルQ&A Q ラブホテルにペットと一緒に泊まりたいのですが可能ですか?(50代、会社員、女性、神奈川県) A さすがに、こればっかりはNOと言わざるを得ません。ペット同伴化のラブホテルなど見たことがありません。そもそもラブホテルは人間以外の滞在を一切想定していません。しかし、筆者は一度だけ経験があります。東日本大震災の時、原発事故におびえて山梨付近に西進する中、車中に乗せた猫と一緒にビルトイン式のラブホに一泊しました。非常時のせいか、オーナーは特別の措置として許してくれました(その分、デポジットを倍につけました)。  そういえば阪本順治監督の映画『顔』(2000年)では、阪神大震災直後、ラブホテルのオーナーが非常事態の措置として神戸方面からの被災者のファミリーを客室に受け入れるシーンがあります。実際に震災直後は、ラブホテル経営者がこのような粋な計らいをすることは現実にあったようです。ただ、目下平時ですと、ラブホに犬猫と一緒に泊まるというのは極めて難しそうです。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
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