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どんな言い訳も通用する国と怒らない国民/鴻上尚史

自浄作用のない自民党の恐ろしさ

 やっぱり、源泉徴収が原因ですかね。給与や報酬から支払い前に所得税を控除する源泉徴収は、日本では1940(昭和15)年、戦費調達のために始まりました。  先に控除すると、悔しいですけど「税金を払っている」「がっぽり取られた」という実感が薄くなります。  アメリカみたいに自営業者だけではなく、源泉徴収のサラリーマンも、全員が確定申告をしなければいけないと、「ああ、こんだけ取られてるんだ」と実感できるわけです。  でも、日本だとサラリーマンは年末調整で、数字上の操作ですみますからね。  数字を見て終わるか、自分で実際に現金を振り込むか。この違い、サラリーマンを辞めて、自分で確定申告をした人なら、ようく分かると思います。  自分で振り込むようになると、「税金、ちゃんと使えよ。ムダな使い方したら怒るからな!」と思う傾向が間違いなく強くなるのです。  しかしまあ、「桜を見る会」です。  いつまでやっているんだと思っている人もいるでしょうが、招待名簿さえ出てきたら、それで事態は明確になるわけです。  それをあれやこれやと逃げ続けるから、野党も引っ張るわけですね。よっぽど、出てきたらまずいことがあるんだろうなあと思います。  でも、もっと言えば、野党は批判勢力なんですから、問題にして追及するのは当たり前です。 「桜を見る会」の一番の問題点は、自民党の内部から、まったく批判が起こってないことです。  かつての自民党なら、子供の言い訳みたいな答弁に対して、長老や若手や対抗派閥が敏感に反応したと思います。  それが、まったく聞こえてこない。  この自浄作用のなさが、本当に怖いと思います。  かつては、派閥争いが激しくて、首相が一年足らずで辞めていくということが続きました。国民はいい加減にしろと怒りましたし、自民党も反省したのでしょう。  安定した長期政権を目指そうとして、結果として、憲政史上最長の宰相になるんですから、極端から極端しかないのか! と頭を抱えてしまいます。これは国民が成熟してないという証拠なんでしょうなあ。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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