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新型コロナは長すぎる安倍政権のメッキを剥がしてくれた/倉山満

もはや1日でも長く続けば、国家の損失。長すぎる政権は、矩を超えた。その象徴が、検察人事への介入だ

 そもそも、なぜ安倍晋三が今の地位を占めることができるのか。  自民党の存在意義は、「国民に飯を食わせること」である。ところがそれが、バブル崩壊でできなくなった。トドメがリーマンショックである。時の首相は麻生太郎。国民は、「鳩山由紀夫民主党でもいいから、麻生太郎自民党はイヤだ」と選択した。ところが民主党は無能の限りを尽くし、東日本大震災でトドメを刺された。民主党は「官僚の言いなりになってはいけない」ということだけは知っていたが、それだけだった。  代わって登場したのが安倍政権である。最初の1年は良かった。アベノミクスは絶好調、景気は記録的な回復軌道に乗った。しかし、官僚に消費増税を押し付けられ、惨めに屈服。その後は2回の増税延期をしたのだが、所詮は延期。景気回復の勢いは戻らず、遂に10%の増税。既に日本経済の悪化はリーマン級だ。いつ、それが誰の目にも明らかになるか、時間の問題だ。  民主党の罪は「自民党の方がマシ」だと思わせたことだ。自民党など、官僚の振り付けで踊る以外に何の取り柄も無いのに。その証拠に、今回のコロナ騒動だ。官僚が間違えたら、自民党は白痴にすぎない。それでも災害対策だけはマトモにやって来たはずだが、こうなると自民党を存在させる意味はない。ましてや、安倍内閣が1日でも長く続くと、それだけ国家の損失だ。  長すぎる政権は、矩を超えた。その象徴が、検察人事への介入だ。  1月31日、安倍内閣は閣議決定により、黒川弘務東京高検検事長の定年を延長した。検察庁法で検事の定年は決まっているが、森まさこ法相は国家公務員法の規定を援用したと説明した。しかし、過去の政府見解では、検事は国家公務員法の定年延長の適用外である。人事院の松尾恵美子給与局長は「過去の解釈は生きている」と答弁した。当然だ。森法相は立ち往生する。  ところが安倍首相は「解釈変更した」と言い切る。腐っても鯛、総理大臣が答弁してしまえば、官僚は答弁を合わせなければならない。松尾局長は答弁を撤回してしまう。追及する野党も気が引けていた。当たり前だ。松尾局長は、政権により嘘を強要されているのだから。  安倍首相は「法務省が言ってきたので認めた」と、他人事のように答える。森法相も「官邸に忖度したことはない」と言い張る。誰が見ても口裏合わせだ。  与党は数を頼みに逃げ切るつもりだろうが、権力を維持して、この人たちは何がしたいのか。  ところで。象徴的な場面があった。  法務大臣と内閣法制局長官の答弁が食い違った。野党は「どちらが嘘をついているのだ?」と追及する。法務大臣が前言を撤回した。政治家は間違うが、官僚は無謬なのか。  これでは選挙の意味が無いのではないか?
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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