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貧乏な人はシェアハウスで乗り切るしかない。ギャンブル狂の生命力

今、その瞬間に無一文の人間は一ヶ月後も金に困っている

 賭ける金が一円も無い人間は素直に働くしかない。貧乏人の体は安く、アツくなった僕が血を賭けたいと言ったとしても、普通の人なら血もいらないし腎臓も別に欲しくない。そもそもギャンブルの土俵に上げさせてもらえないのだ。  横浜の雀荘の外で僕が最初にしたのは、バイト探しだった。金と家なら先に金を確保しなければならない。家はあるだけで金がかかるからだ。僕は目に入るバイト先に片っ端から応募した。この時日払いかどうかなんてものは気にしない。気のいいバイト先なら事情次第で先に10万円貸してくれたりするので、働き始めるその瞬間までは自分の可能な限り働く用事を入れよう。 「今、その瞬間に無一文の人間は1ヶ月後も金に困っている」  という言葉がある。僕の言葉だ。どうせ金が無い人間に大した用事は無い。未来に期待するくらいなら忙しくなってしまえ、という精神が結果的に明日の自分が進む橋となる。  バイト先を一通り見つけ、働く先を手に入れたら次に住居だ。友達がいる場合は許される限り転がり込んで仕舞えばいいが、そうでない場合はシェアハウスをオススメする。  今もきっとそうなのだろうが、シェアハウスは会社によっては敷金も礼金も取らない場合が多い。家を借りる時にまず見るのは家賃表示だろうが、あんなものは飾りだ。毎月払うのが6万だろうと8万だろうと、10万を超えると流石に気になってくるが、10万円以下の物件であれば1ヶ月の生活の中でいくらでも調整が効く。土曜に夜勤をすれば3万、土日で働けば6万くらいの誤差なら埋められる。  問題は敷金、礼金、仲介手数料だ。そもそも何のきっかけもなく気付いたら金が無いような人種は貯金ができない。口座の中が10万円くらいになった段階で財布の紐が緩み始め、気付いたら月の出費がかさみ、自己責任と書かれたタスキを体にかけて恥も忘れてまた金が足りない生活に戻っていく。そんな人間が40万円という途方もない金額を貯められるわけもない。もちろん人生の転機に出会って生活の根幹から変える強い意志があれば別だが、そんな幸運が巡ってくるのをただ待っていたら平成の世が終わってしまった。  僕が連絡を取ったシェアハウスは身分証と前金の4万があれば即入居できるところだった。ここも貧乏人に優しい。「貧困ビジネス」とはよく言われるが、それでもビジネスとして成り立つのは、やはり貧困の人間にリーチしているからだ。たとえそれが緩やかな毒だとしても、とりあえず今助かりたいからその皿を喰らう。身分証だけで、連帯保証人が必要ないのも良い。明日の金のことで頭がいっぱいになっているような人間にとって、連帯保証人が必要ない場面は非常に助かるのだ。  4万円を握り締め、シェアハウスの会社の本社に行く。一応面接はあったが、それは「ヤバすぎるヤツでないかどうか」を見定めるだけのものに過ぎず、普通の顔をするのが得意な僕は何も問題なく鍵を受け取った。  池袋駅の近くにあるそのシェアハウスは一軒家を改造したもので、風呂が一つにトイレが二つ。部屋は大部屋が三つあり、各部屋に二段ベットが二つ、合計12人暮らしの魔境だった。やり直すにはこのくらいがちょうど良い。周りへの音も気にするから無駄金も使わずに済む。都合の良い解釈をするならば、 「無駄遣いは余剰余白から生まれる」  ということだ。これも僕の言葉だ。肩身の狭い生活の中で強制的に怠惰に食い潰していた時間をカットするのだ。早くこんなところから引っ越してやる、と思いながら。  さあやってやろうぜ。そこが背水の陣だ。 〈文/犬〉
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩
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