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厚労省の禁煙新法案で浮上した“3つの懸念事項”

 1月30日、厚生労働省は「『望まない受動喫煙』対策の基本的考え方」を公表した。これは、昨年3月に同省が公表した「受動喫煙防止対策の強化について(基本的な考え方の案)」の改正版。これを受けて、東京都の小池都知事は、「東京都受動喫煙防止に関する条例」の都議会定例会への提出を見送った。今回の改正版の概要については下図を参照してほしい。

厚労省の禁煙新法案・図表 飲食店が“原則禁煙”であることに変わりはないが、適用除外とされる店舗の条件に変更があった。適用除外となる条件を抽出したところ、以下のとおりとなる。

1 既存店に限る
例えば、新規出店の飲食店は業態・店舗面積は関係なく、喫煙所を設置しない限り店内でタバコを吸うことはできない。

2 面積が一定規模以下
前回の受動喫煙対策案で「30平方メートル以下のバー・スナックなら喫煙可能」とされていたものを、「面積が一定規模以下の店舗は、『喫煙』『分煙』等の標識の掲示を条件に喫煙を認める」というもの。具体的な面積については「店舗面積150平方メートル以下」という報道もある。

3 中小企業や個人が運営する店舗
例えば大手チェーン等は適用除外とならず、喫煙所の設置が必須となる。これはファミレス、ファストフードのみならず、居酒屋・焼肉チェーンにもあてはまる。“中小企業”の定義については、“資本金5000万円以下”という基準が検討されている。

 改正前の「受動喫煙防止対策の強化について」は、昨年の通常国会で審議されたものの、「喫煙可・分煙・禁煙のステッカー表示で対応すべし」という自民党案と対立する構図となり法案は否決された。また、世論調査やパブリックコメントでも明確な支持を得られなかったことを受けて、厚労省案と自民党案の折衷案であることが伺える。そもそも、受動喫煙対策法は2020年の東京五輪に向けての火急の政策課題。「適用除外の基準」を細かく調整することによって、「何が何でも今国会での成立を目指したい」という厚労省側の意図が見え隠れする形となった。

 が、それぞれの変更点を見た限り、懸念は残る。「1」~「3」についてそれぞれ見ていこう。

 まずは「1 既存店に限る」について。カウンター形式の小規模スナックやバーなどを新規出店したい場合、物理的に喫煙所の設置は困難である。つまり、これらの業種に新規参入したい経営者にとっては「完全禁煙スナック」「完全禁煙バー」にするしか選択肢はない。いわば、風営法の改正によってソープランドや店舗型風俗店が新規出店できなくなったのと同じで、いたずらに参入障壁が上がってしまう。「喫煙できるバー」を出したい新規業者にとっては、「経営権の譲渡」という形で既存店をリニューアルすることが得策となり、既存店の既得権が高騰する恐れにも繋がる。

「2 面積が一定規模以下」は、例えば都内の繁華街であれば「店舗面積150平方メートル以下」が、小規模店に合致するイメージはある。が、地代の安い、地方や郊外にある個人経営の小規模店では、やたらと広くて客席は少ないお店などゴマンとある。「客席面積100平方メートル」に基準を変えたところで、レイアウト次第ではいくらでも変更できるわけで、面積による基準を設けることで、“法の抜け穴”的な解決策が横行するのではないかという懸念。

「3 中小企業や個人が運営する店舗」は、「資本金5000万円以下」が中小企業の定義とされている。が、例えば焼肉チェーンで見れば「牛角」の(株)レインズインターナショナルの資本金は55億円で適用除外とはならないのに対し、「叙々苑」の(株)叙々苑は資本金1000万円で適用除外となる。居酒屋チェーンの養老乃瀧は資本金5154万円で適用除外とはならないが、減資すれば適用除外となるなど、何やらややこしい。

 これらの懸念から生じるのは、適用除外の有無がもたらす不公平感の拡大だ。適用除外とならないお店同士を比べても、喫煙所の設置コストを捻出できるか/できないかによっても違ってくる。また、今回の厚労省案では、初めて「加熱式タバコ」についての項目が追加された。要点をまとめると、「喫煙所内では飲食ができないが、加熱式タバコに限っては、完全分煙化された専用客席内での喫煙が可能」となる。加熱式タバコの受動喫煙被害についての科学的な知見が不十分であることから、何やら駆け足で条件だけを追加したようにも見えるが、“規制ありき”で一律的に店舗・客に不公平感と不自由を強いることのないよう、今後も慎重な議論が望まれるところだ。〈取材・文/日刊SPA!取材班〉





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