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借金500万円男。宝塚記念を振り返り、少しだけセンチな気持ちになる

―[負け犬の遠吠え]―
ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。 それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。 「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は56回目を迎えました。  今回は宝塚記念を振り返って少しセンチメンタルな気分になったお話です。

カレンブーケドールだけを見ていた

ギャンブル負け

写真はイメージです

 ゲートが開き、いつも見るG1よりも小さい馬群が一斉に放たれた。  レイパパレ、ユニコーンライオンの2頭が前を逃げる。キセキはいない。去年からキセキを信じた者もいただろう。彼らはここで一つ肩を落としたのかもしれない。  僕が信じたカレンブーケドールはそのすぐ後ろの馬群の中にいた。クロノジェネシスにピッタリとついている。  少し短めの2200m、僕の3万円は全てカレンブーケドールの前か後ろにしかぶら下がっていない。ただずっとカレンブーケドールだけを見ていた。カレンブーケドールを外した馬券を100円でも買ったら信じた運命が曲がってしまうような気がして買わなかった。  ユニコーンライオンが邪魔だな。  最後の直線が思ったよりも短いように感じた。競馬場や調教の違いについて詳しくはないので気のせいかもしれないが、阪神は最後の直線が短く見える。  先頭で頭ひとつ分の接戦を繰り広げるレイパパレ、ユニコーンライオンの後ろの馬群からクロノジェネシスが飛び出す。慌てて追いかけるようについてくるカレンブーケドール。  レースを見ていた僕はこの時に頑張れ、と思っていたのだろうか。 「遅れてしまったな」と思っていた気がする。馬群から飛び出したクロノジェネシスが先頭の2頭に追いついた時、引いたカメラの端にはもうゴールが見えてしまっていた。クロノジェネシスを追うカレンブーケドールは3着のレイパパレを捉えてすらいなかった。競馬で負けることに慣れすぎて、結果が出たことへの安堵感が勝った。  3万円失った後悔をカレンブーケドールへの慰労の気持ちで上書きする。これは最後のG1かもしれない彼女への「おつかれさま」であり、自分のためではない。

ファイティングポーズの“練習”を続ける日々

 終わってみれば主役はやっぱりクロノジェネシスで、勝つためにはそういう馬券を買うべきだったのかもしれない。カレンブーケドール以外の馬を軸に馬券を立てたら運命が変わってしまうかも……なんて考えていたが、宝塚記念を買う無数の人間の運命全てが僕の都合通りにねじ曲がるはずもなかった。  1日経ち、カレンブーケドールに言い訳の一端を背負わせようとしていた自分に気づいた。  カレンブーケドールを心から応援し、勝負に勝ち、今の生活をひっくり返すために選んだのではなく、「1頭の馬に想いを込めて負けたのだから仕方がない」という言い訳で自分の人生を飾ろうとしていたのだ。運で決まる博打に身を委ねる気持ちよさの一つである。 「信じてみたけど博打は運だから仕方がなかった」  馬券を買う時、1番人気のクロノジェネシスも2番人気のレイパパレも無視した買い方をしたのは、挑戦ではなく明らかな無謀だった。馬券よりも自分を優先していた。 「カレンブーケドールを信じる自分」 「この窮地で3万円を賭ける自分」 「……でも、負けちゃったんだからしょうがないよね」  僕はいつまでファイティングポーズの練習だけをするのだろうか。
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間に合わないセーフティライン
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