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モラルや正論が通じない「ぴえん系」カルチャーの実態とは?佐々木チワワ×真鍋昌平

本当に面白いなと感じる瞬間をどれだけ増やせるか

ぴえん

イラスト提供/©真鍋昌平・小学館

真鍋:こうしたほうがいいですよ、とアドバイスしたところでその先にある未来の想像がつかないから響かないんですよね。ただ、いずれにせよ、端的なところに幸せを求めると無理をするので絶対に破綻する。そうではなくて、今すぐに自分にできる範囲で本当に面白いなと感じる瞬間をどれだけ増やせるかは大事だなと思います。自分の場合は食べたいものを作ったり、犬の散歩だったり、それは簡単に手に入れられる幸せじゃないですか。 佐々木:それが歌舞伎町では「お金を稼いでいる時間以外無駄」「売り上げゼロは無価値」といった洗脳を受け、だんだんと視野が狭くなってしまうんですよね。まわりのホス狂いのコたちも「学校の友達とご飯行くくらいならおじさんとパパ活して1万円稼がなきゃ」なんて普通に話してて、本当に死に急いでいる感じで稼いでいて。何もない時間を楽しめるだけの心の余裕がある人は限られると感じますね。 真鍋:漫画も結局売れないと無価値にされちゃう面があるので、少しだけ気持ちはわかります。「朝まで飲んでも昼には描いていてすごいですね」なんて関係者によく言われるんですけど、描いている方が精神が安定するんですよ。

いつなくなるかわからないコミュニティ

佐々木:そういう意味では、トー横の子たちはただあの場所にたまっているだけで何時間も潰せるからすごく幸せだと思うんです。ただ、家庭や学校に居場所をなくして見つけたその場所さえ嫌になって抜けるときに、やっぱり夜職だったり、売春だったり、安易な思考になりやすい印象があって。 真鍋:それに加えて最近は警察の見回りも強化されたり、鳥よけシートを設置して座れなくしたり、締めつけも厳しい。 佐々木:本当にいつなくなるかわからないコミュニティですし、実際、関係者の中にも「あそこは終わりっスよ」なんて言っているコもいるけど、私はやっぱり歌舞伎町が好きだし、自分自身が10代の頃にお世話になったので。この後また新しい文化が生まれるか否かも含めて、見届けていきたいですね。 【漫画家・真鍋昌平】 神奈川県茅ケ崎市出身。社会の底辺にいる人々の生活や心理を克明に描き続ける。代表作『闇金ウシジマくん』はドラマ化・映画化もされた。現在『週刊ビッグコミックスピリッツ』で「九条の大罪」を連載中 取材・文/上野友行 撮影/長谷英史
現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

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