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菅義偉前首相が今さらながらに評価される理由/倉山満

ヨーロッパの君主国で、日本より途切れず古い国はない

 国際社会の掟だ。歴史が古い方が、問答無用で偉い。そして途切れることなく続いている方が偉い。ヨーロッパの君主国で、日本より途切れることなく古い国はない。  まずイギリス。公称1066年の建国だが、現在の王室は1660年からだ。我が国で言えば徳川時代。日本人で天皇陛下に向かって「三河の土豪の風習に従ってください」などと言えば、笑われて終わりだ。  世界で、我が国に続いて歴史が古いデンマーク王室は、936年ごろに始まったとの伝説がある。我が国で平将門が暴れ回っていたころだ。

スペインの祖は第50代桓武天皇の時代の人物

 スペイン王室は、王政復古を繰り返し、今の王室は1975年から始まる。ブルボン家とハプスブルク家の両方の血を引いているが、その双方の祖はカール大帝だ。我が国第50代桓武天皇の時代の人物だ。  オランダ王室は、我が国の戦国時代にハプスブルク家から独立した。  今のスウェーデン王室の祖は、ナポレオン(ヨーロッパ一の成り上がり者)の部下だった将軍だ。そのスウェーデンから20世紀に独立して、今のノルウェー王室がある。  ヨーロッパに倣いたがる舶来信者が語る皇室論など、歯牙にもかける必要はない。

時代錯誤が嫌なら、なぜ世襲制を残すのか

 我が国は、神武天皇の伝説以来、公称2682年間、控えめに言って1500年間、一度も途切れることなく続いてきた。一時の時流に流されて、歴史を変えるべきではない。  このように「我が国よりも歴史が浅い国々に倣う必要がない」と切って捨てると、時代錯誤だの男女平等を何と心得るのかとの感情的な批判が飛んでくるのは目に見えている。しかし、時代錯誤が嫌なら、なぜ世襲制を残すのか。伝統と因習は紙一重であり、枝葉の細かいところで変えるべきは変えるべきだが、幹の変えなくて良いものを変えてはならないのは当然だろう。

男系継承とは「一般人の男子を皇室にいれないこと」

 そもそも皇室は、男女平等とはまったく別の次元で、伝統を積み重ねてきた。神武天皇の伝説以来、一度も例外がない原則が、「皇位の男系継承」である。歴代天皇の内ほとんどが男系男子で、例外は男系女子だ。すべての天皇の父親をたどると、神武天皇にたどりつく。  この男系継承とは何か。「一般人の男子を皇室にいれないこと」だ。  一方、奈良時代の光明皇后以来、皇室に入った女性は何人もいる。古代は皇族同士の結婚が普通だったが、光明皇后以降は天皇の奥方は民間人から迎えるのが常例となっている。これには複雑な事情があり、後世の先例となったが、それでも民間人皇后を新儀として強行した際は多くの血が流れた。皇室において新儀は不吉、無理やり行うことではない。
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近代の価値観を当てはめるのに何の意味があるのか
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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