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常に不安定な「皇位継承の伝統」をいかに守るか/倉山満

常に不安定な皇位継承の伝統をいかに守るか

 今のままだと悠仁殿下がご即位された時、皇族が一人もいなくなる。しかも、仮に何十年後か悠仁殿下にお子様がいなかった時に話を始めても、間に合わない。愛子内親王殿下や佳子内親王殿下にも、悠仁殿下を支えてもらわねばならない。今後、両殿下が皇室に残るのか、あるいは天皇陛下の妹君であられる黒田清子様のように民間に嫁いだ立場で皇室を支えていただくかはともかく。  結局、絶対に子供が生まれる技術が存在しない以上、皇位の継承は常に不安定なのだ。それでも我々日本人は、変わらぬ伝統を守ってきた。たとえるならば、蝋燭の火はいつ消えるかわからないが、灯し続けてきた。それを時代に合わせて電球にとりかえて、伝統を守ったことになるのか。  ちなみに、側室制度が無い以上、皇位の男系継承は不可能だと言うが、側室が何人いても一人も子供が生まれなければ、そこで家は絶える。さらにちなみに、女系継承にした場合、男の側室でも置くのか? 余計に皇位が絶える可能性が高まるのは、少し考えればわかるだろう。男は子供を産むことができないのだから、男の側室になど何の価値もない。

皇神・アマテラスが女性だから、女系継承が伝統とは一体……

 皇位の男系継承は、皇祖・神武天皇の伝説どころか、神話の時代からだ。皇神・アマテラスが女性だから女系継承が伝統のはずだと唱える古代史学者もいるのだから、何を考えているのか。では、アマテラスの夫は誰か。スサノオだ。二人は姉弟婚で、両親はイザナギとイザナミ。アマテラスとスサノオの息子の息子の息子の息子の息子が神武天皇だ。神武天皇に至る子孫は全員が神様。皇族どころではない。ここからなぜ、一般人の男(小室圭氏を想像されたし)が皇族の姫君と結婚したら皇族になれて、その子が天皇になれるとの理屈が出てくるのか。
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皇神・アマテラス(天照大御神)とスサノオ(須佐之男命)から神武天皇に至るまでの系図 図版/ミューズグラフィック

 いかなる先例も最初は新儀ではないか、とは誰でも思いつく。ただし、それを言うことは天皇であっても許されない。第96代後醍醐天皇などは、まさに「朕が新儀は後世の先例たるべし」と言い放ってしまったので、公家社会から見捨てられ、建武の親政は潰えた。それを教訓に明治維新では「神武創業の精神」を先例とした。もっとも、明治政府の改革にも無理が多かったが、欧米列強に植民地にされないよう無理をした。新儀など自分からやるものではない。
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第33代推古天皇は新儀ではない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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