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北朝鮮の街が欧米化!? 開放路線を狙う金正恩体制の変化

欧州、エジプト企業により建設再開された、高さ世界4位の柳京ホテル

 北朝鮮の金正日総書記が死去、息子の金正恩第一書記が最高権力者に就任して1年。

 寒々としたカリアゲヘア、夫人を同伴させて遊園地で大はしゃぎ、寅さんのようなファッションで練り歩き、しまいには「金正日総書記の料理人」藤本健二氏との電撃再会劇など、この1年で正恩氏は世界中の北朝鮮マニアの度肝を抜いてきた。

 しかしそればかりでなく、金正恩体制になってから北朝鮮には明らかな”変化”が訪れている。

 2012年12月、人工衛星を軌道に乗せたことが北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)によって確認され、今年1月にはグーグル本社シュミット会長の電撃訪朝が報じられた。

 欧州の北朝鮮支持者によるフェイスブックページ「Viva Corea del Norte」(※スペイン語)で日々更新される写真を見ると、変貌ぶりがより詳しく感じられる。

 平壌市内に設置されたスケボーパークで欧米風のスケボーファッションに身を包んだ少年が楽しむ姿、コカ・コーラ風の飲み物や、カラフルなネオンに彩られた高層ビル、豪勢な施設群など、従来の北朝鮮のややズレたセンスとは明らかに違う現代風の様子が見て取れる。”ハリボテ”ではないのか、と見る向きもあるが……。

 北朝鮮情報サイト「デイリーNK」日本支局長で、『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』(新潮社刊)の著者、高英起氏は話す。

「金正日総書記が死去してから、北朝鮮が新しい時代を切り開こうとしているのは事実です。特に、イメージ戦略と文化芸術の普及に力を入れており、金正日時代から脱却しようという強い意志が感じられる。それが顕著に表れているのが、国営バンドの『モランボン楽団』です。女性歌手のミニスカートの丈は過去最短ですし、公演内容も曲調もK-POPとまではいかないまでも、単純に海外を意識した演出をしている。金正日総書記が設立した旧国営バンド『普天堡軽音楽団』の歌は今やほとんど流れていません」

⇒【画像】過去最高の露出度で歌う北朝鮮の“アイドル軍団”
http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=378418


 スイス留学歴もあり、国際的感覚を持ち合わせた次世代の指導者像を印象づける狙いがあるようだ。

 父親時代の既得権益に預かる幹部も多いとされる中、正恩氏の影響力はいかほどのものなのか。

「正恩氏自身が企画しているというよりは、開放路線を目指すグループから進言され、最終的に彼がGOサインを出しているのです。それらは北朝鮮の体制を揺るがすような、影響力のあるものではありませんが、大きな違いは金正日体制ではそういう提案自体ができなかったということ。先の時代は失敗を恐れ、何をやってもどうせダメだという閉塞感があった。実際、デノミの責任者が処刑されていますしね。金正恩体制になってからは、よくいえばモチベーションが上がっているんです。一方、古い時代の既得権益層をどれだけ抑えきれるかが正恩氏の一番の課題になるはずです」(高氏)

⇒【画像】欧米化!?している北朝鮮
http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=378425


 そんな中で最も大きなポイントとなるのは、やはりインターネットの解禁問題である。

「やはり情報公開をしない限り、文明国として発展していくのは厳しい。携帯電話事業はビジネスとして成立していますが、インターネット事業はどうか。ネット未開の地とはいえ人口2300万人のマーケットでそこまでうまみがあるのか。シュミット会長もそこはシビアに見たのだと思いますよ。だから今回の訪朝では、良くも悪くもリップサービスに留めたのだと思います。具体的にどうするのかは正恩氏の決断にかかっていますが、情報統制に関しては地方に行けばいくほど厳しくなっており、それによって旨みを得ている層としては情報公開に猛反対するでしょう」(同)

訪朝したシュミット会長一行。朝鮮側の招聘に応じた形だというが、目的は不明のままだ。「個人的には、双方のミーハー気分が合致したのでは?と思う。シュミット氏は北の若将軍に呼ばれて興味津々だっただろうし、私が正恩氏だったらシュミット氏に会えるとなると身を乗り出しますから(笑)」

 北朝鮮は過去、携帯電話も試験的に導入して中断し、再開・普及まで10年を費やしたとされているだけに、インターネットに関しても近い将来の全面的解禁は厳しいと思われる。

 北朝鮮事情に詳しいライター・安宿 緑氏は次のように話す。

「現地の幹部の話によると2年程前に一度、ワールドワイドウェブを試験的に開通させたが、ウィルス対策をしていなかったために世界中からウィルスが流入してしまい、いったん閉じたということです。また、イントラネットを通じたネットショップも一時期は存在していた。事実、当時の一般市民が所有するパソコンはウィルスまみれになっていました。私も一般市民からパソコンを借りてみた際、差し込んだUSBメモリのデータがウィルスのせいで全て消し飛び、日本に戻ってなんとか復旧させたということがありました」

 インターネット全面開通となればウィルス流入どころではなく、体制を揺るがしかねない一大事変になることは必至だ。金正恩体制が慎重になるのも当然だろう。

 待ったなしの世界情勢の中、30歳の指導者は国内の改革派と旧体制派をいかに取りなせるのか。

 そして、日本との関係にも変化が出てきている。

 金総書記の長男・金正男氏のインタビュー本『父・金正日と私』の著者、五味洋治氏は語る。

「実は今が過去15年来で最も、日朝関係が活発なのです。日朝平壌宣言から10年が過ぎ、体制も変わった今、北朝鮮側から積極的に日本に働きかけており、外務省もそれに応じる動きがあります。北朝鮮とは拉致問題を除けば中国・韓国のように領土紛争があるわけではないし、利害関係さえ一致すれば関係正常化は難しくないと言える」

 対北強硬派の安倍政権、そしてアジア各国がどのように対処するのかを含め、確変要素が尽きない金正恩体制に今後も要注目である。

金正恩体制はミラクルを起こせるか

<取材・文/日刊SPA!取材班>

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