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体罰容認はブラック企業を生み出す土壌である

◆体罰肯定論は、ブラック企業肯定論!

今野晴貴氏

今野晴貴氏

 言葉の暴力だけにとどまらず、連日のように社内で繰り広げられる残虐な暴力行為の数々。労働問題の相談・サポートを行うNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏は、「体罰そのものの質が変化している」と語る。

「これまでも“育てるための体罰”が伝統のように行われるような風潮がありました。しかし、それは終身雇用制度が主流だった時代の話。現在の体罰は“相手を潰すためだけの体罰”です。育てる体罰も日本の悪しき伝統ですが、ノルマを達成させるための脅しや恐怖を与える手段にすぎず、事態はより深刻になっています」

 当法人への体罰と呼べる暴力行為の相談件数は年に10件前後。大半の被害者は声を上げることもできずにもがき苦しんでいるという。

「被害者は『暴力を振るうような企業と争うのは怖い』『もう関わりたくない』と泣き寝入りしてしまうことが多いので、体罰自体あまり表沙汰にならないのが現状です」

 また、実際に「辞めたくても取り合ってもらえない」「社内の第三者に相談したことで、会社ぐるみの嫌がらせを受けるようになってしまった」という例もある。

「会社の規模にかかわらず、体罰に対して企業自体が無関心というところも少なくありません。中には『辞めたら損害賠償を請求する』と脅されたという事例もありますが、法的な根拠はまったくありません」

 訴える際、いかに暴力の“証拠”を残しておくかが重要になる。

「暴力行為の立証に有効なのは、医師の診断書や、実際に暴力を受けているときの音声データなど。日記やメモとして、いつ、どこで、どのような暴行を受けたのかという内容とともに身体的な症状を含めた記録が非常に役に立ちます」

 証拠の有無によっても、その後の交渉態度が異なるという。

 社内で繰り広げられる暴力行為に対し「体罰によって学ぶことはない」と断言する今野氏。

「体罰を肯定するということは、同時にブラック企業も肯定しているようなもの。上の世代は特に、『耐えられないほうが悪い』と、すぐ根性論になってしまう。『若者に厳しさを教えなければいけない』という発想が、体罰をしてでも追い込めればよいという考えに繋がり、結果的にブラック企業を肯定することになるのです。その結果、従順なだけの若者が溢れ、逆に経済効率が落ちこむ恐れもあります。『暴力は下等な手段』という意識を皆が持ち、その一線を守った上での、教育を行っていく。その土壌を行政などが整えなくてはなりません」

 体罰・パワハラの一掃は大変かもしれないが、その先には前向きな未来があると今野氏は言う。

「個々のモチベーションが上がり、創造的な労働が増える。それに伴い、生産性や経済成長も促進されるはずです。暴力がはびこるむちゃな職場環境を『体罰』の一言で正当化してしまっては、日本の進歩はありません」

 日本の経済成長を妨害する可能性さえある「体罰」。決して許される行為ではないのだ。

【今野晴貴氏】
NPO法人POSSE代表。2006年、学生・若手社会人を中心に「若者主体のNPO」を設立し、1000件以上の労働相談に関わる。近著に『ブラック企業日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)

取材・文/青柳直弥・大貫未来(清談社) 青山由佳 吉岡 俊 八木康晴(本誌) 取材/藤村はるな 福田 悠 撮影/水野嘉之
― 教育現場よりヒドい![会社の体罰]被害者が叫ぶ悲痛な声!!【7】 ―

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪

若者を使い捨て、日本の未来を奪う。その恐るべき手口とは?




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