“号泣会見”野々村県議の逆ギレ戦法は効果あり!?
不祥事を起こした際、重要なのはその後いかに事態を収束させるかだ。そんな「不祥事・危機対応」に関して、多くの企業などから相談を受ける長谷川裕雅弁護士が、世間を騒がすスキャンダルの数々を「危機対応力」という面から読み解く――。
【第二回 兵庫県議の号泣会見】
兵庫県議の野々村竜太郎議員が県内などを日帰りで195回訪問したとして、300万円以上を政務活動費として支出させた件。交通費の領収書添付や現地での具体的な活動報告がなかったことが問題とされています。釈明会見では号泣しこぶしで台を叩きながら、会見の趣旨とは無関係の政治理念なども力説していました。好戦的な態度で「あなたにわからないでしょうね」とも。
会見後にインターネットで野々村氏の名前を検索すると、不自然な公費支出そのものを弾劾する意見が、会見前に比べて激減しました。奇行に対する冷笑的なコメントが大部分で、公金の使途目的についての言及はほとんど見られません。短期的に見るとネット上の反応は、新しい情報に対して敏感になります。会見に対する違和感ばかりが話題になり、公金支出の適否の問題はどこかに飛んでしまいました。
ネットユーザーの反応を見る限り、不正疑惑を晴らしたい野々村氏の逆ギレ戦法は奏功した、と言えなくもないでしょう。論点は本来、税金が適切に使われているかどうかであって、一議員の珍奇性ではありません。野々村氏は公費の不正支出を断罪される立場で、憐憫の情を向けられる対象ではないはずですが……。
しかし野々村氏は適切に対応したのかというと、むしろ逆に、最悪の事態に陥ってしまいました。議員たるもの、選挙民からの信頼に足る人物でなければなりませんが、今後、彼に県政を安心して託そうという兵庫県民がどれだけいるのか。公金の不正支出疑惑を決定的にするよりも、号泣でピエロを演じたことは致命的でした。
野々村氏はもっと堂々と構えるべきだったのです。自販機での切符購入で領収書が出ない場合は、領収書添付の例外規定として認められていました。真偽はともかく、領収書が自販機で発券されることは知らなかったと釈明しています。筋は通しているのですから、泣きわめく必要は全くない。
そもそも号泣が不自然に見えます。今年流行の偽装だったとすると、突然の対応を迫られての奇策だったのでしょうが、目的が議員活動の継続であったとすると本末転倒です。思い切ったことをやる前に、客観的にどう見えるかについて相談できる参謀はいなかったのでしょうか? <文/長谷川裕雅 構成/日刊SPA!取材班>
■長谷川裕雅(はせがわ・ひろまさ)■
東京弁護士法律事務所代表。朝日新聞記者を経て弁護士に転身。現在は政治家や芸能人のマスコミ対策を想定した不祥事・危機対応や、相続問題などにも取り組む。著書に『磯野家の相続』(すばる舎)、『なぜ酔った女性を口説くのは「非常に危険」なのか?』(プレジデント社)

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