偏差値40でも一流大学に合格できるのか?
「100点を目指すやつはアホ」「3大予備校、いま入るなら◯◯◯」「教師の進路指導は信じるな」「勉強だけしても受からない」etc. 医学部合格の請負人こと松原好之氏(医系進学塾ビッグバン代表)と、講義のプロ、倉山満氏(倉山塾塾長)が受験業界のカラクリを暴露しながら、志望校に最短、最速で合格する方法を徹底的に考え抜いたという『偏差値40の受験生が3か月で一流大学に合格する本』を発売する。受験シーズンまっただ中の今、「従来の受験本とはまったくちがうものに仕上がった」という異例の内容に迫る。
――前回(https://nikkan-spa.jp/731382)までのお話で、受験が20年前とはすっかり様変わりしたこと、だからこそ「今どきの戦略」が必要だ、ということがわかりました。こういう時代の受験における親の役割とは、ズバリ何でしょうか?
松原:こと受験において、親の放任主義は責任放棄と同じだ、と私は考えています。子どもの受験は予備校や塾、学校に任せておけばいい、と考える親御さんがいるとしたら、それは大きな間違いだということを、本書を通して知ってほしいですね。
まず、多くの親は「うちの子は偏差値が40だからバカだ」とか「勉強ができない」と短絡的に決めがちです。しかし偏差値40は「勉強ができない」のではなく、「まだ勉強をしていない」状態なんです。そういう認識ができるようになれば、おのずと子どもの成績は上がります。今どきの受験のカラクリは、そうなっています。まだ勉強していない分野はどこかを探し、そこを食わず嫌いせず勉強できれば簡単に点数は伸ばせるからです。
親は偏差値40のわが子に対して「バカだな」と言って叱るのではなく、「勉強していないところはどこなんだ?」と声をかけてほしいんです。
倉山:予備校の講師なり学校の教師なりの言うことが本当に子どものためになるのか、質問する力を持つことも、親の大きな役割でしょうね。偏差値表を鵜呑みにした進路指導しかしない先生を信用してはいけません。子どもにも「あの先生の言うことは当てにしなくていいぞ」と言ってあげていい。私自身を含め、不合理な進路指導の犠牲者はたくさんいます。不合理な進路指導の実例は、本書で存分にさらけ出しています(笑)。
松原:勉強への食わず嫌いをやめさせるのは、我々受験のプロ――予備校や塾――の役割ですが、その予備校を選ぶときに親が出ていったほうがいいのは間違いありません。親なら、社会人として培った「人を見る目」を持っているからです。親が塾長や講師に直接会って、「このオッサンはおもろい」と思えたら、子どもを預けていいでしょう。
父親と母親で言うと、受験では母親が活躍する場面が多いのは事実ですが、ビジネスの世界で揉まれている父親のほうが、予備校の講師が仕事のできる人間かどうかを見抜く目は持っているはずです。どの予備校にするかを決める最初だけでもいいので、父親は、わが子を預けるべき相手を直接見て、判断してほしい。父親が塾の先生を信頼している様子が伝われば、先生のほうにも良い意味の緊張感が生まれます。
倉山:良い先生なら、親の目が光っていることを承知の上で、ときに子どもにとって「耳の痛い話」をしたとしても、成績は伸ばしてくれるはずです。
松原:親も、「信用できる第三者」として、予備校の講師を利用したらいいんです。高校生ぐらいの子どもは、親の言葉はウザくて聞けなくても、好きな先生の話にはきちんと耳を傾けるものです。
倉山:親が余裕を持って子どもに接するのは何より大事ですよね。そもそも、子育ての過程で「子どもは何に向いているのか」、「何になりたがっているのか」を見抜いている存在が親です。親が、「どうせ受験のことはわからないから」と言って変に遠慮したり、反対に子どもの意見を無視して「親の言うとおりにしろ」と高圧的な態度に出るのではなく、あくまで子どもへの愛情を基本にした「余裕」と「自信」を見せてほしい。
本書で用いた「大戦略、戦略、作戦術、戦術」という概念のなかでもっとも大切な「大戦略」は、親が「子どもの幸せって何?」をよく考えることで決まる、とも言えます。もちろん、志望校を決めるのは子ども本人ですが、受験に対する親の見方・考え方は子どもの考えにも大きな影響を与えます。受験は、芸術やスポーツの世界と比較すれば、格段に「楽な」世界であることを知ったうえで、親は子どもの勉強を見守ってほしい。そして18歳の時点ではどうしても進路が決められない子どもの場合、中央大学なら3か月の勉強で受かりますよ、ということを示したのが本書です。
松原:よくある親の勘違いについて、もう一つ例をあげておきます。それは、ゲームが好きな子は、見所も素質もあるよ、ということです。子どもがゲームばかりしていると、一律に「うちの子は駄目だ」「ゲームで遊んではいけない」と言う親が多いのですが、意外とそんなことはない。ゲームに走る子に、頭の悪い子はいないんです。
ゲームの世界とは、まず「戦略ありき」です。だからゲームが好きな子は、戦略好きな子でもあります。戦略を立てて遊ぶのが好きな子は――とくに男の子に多いですが――、本書で示したように、少し方向を切り替えてあげれば、一気に勉強好きに変わります。
受験の原点として、「所詮、試験問題は人間が作ったものだ」ということがあります。必ず、出題者には意図があります。それを見抜くことで合格できるようになっているのが今どきの受験ですから、受験を「出題者の意図を見抜くゲーム」と捉えてください。そうすることで、親のほうも受験への見る目を変えてほしいと思います。
倉山:「偏差値40」の子がどうして一流大学に合格できるようになるか、だんだんわかってきました。読者のみなさん、残りは本書で確かめてください(笑)。
『偏差値40の受験生が3か月で一流大学に合格する本』は、親が持つ「受験への常識」を、いい意味で覆してくれる。本書が強調する戦略思考は、入試本番を3か月後に控えた受験生親子だけでなく、受験が過去の出来事となった一般社会人にも実は有益な視点を与えてくれる。受験を通して語る「目からウロコ」の卓見に、乞うご期待。 <取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/本多誠>
【倉山満】
1996年、中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、同大学で日本国憲法を教える。同時に2009年まで進学塾TOMASにて塾講師として食いつなぎ、「小学生から大学生までを教えて」現在に至る。2012年、コンテンツ配信サービス「倉山塾」を開講、翌年には「チャンネルくらら」を開局し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を展開している。主著にベストセラーになった「嘘だらけシリーズ」三部作『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』(すべて扶桑社)など
【松原好之】
1978年、大阪外国語大学(現大阪大学外国学部)英語学科卒業後、第3回すばる文学賞を受賞。1981年に友人と進学塾を設立する一方、河合塾にて国公立英語プロジェクトチーフとして活躍、現在も教壇に立つ。1998年には医系専門進学塾ビッグバンを設立し、以来、圧倒的な合格率を誇る。多数の参考書、問題集執筆のほか、大学試験問題、模擬試験問題なども作成、受験の裏表に知悉している。主著に『年収600万、子どもの偏差値40以上なら、医学部に入れなさい』(講談社)『9割とれる センター試験の逆算式勉強法』(KADOKAWA/中経出版)など
『偏差値40の受験生が3か月で一流大学に合格する本』 最短、最速。 |
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