中国が反日から“反イスラム国”に転向「今回だけはアメリカと手を組んで」
過激派組織「イスラム国」の勢力拡大が続く一方、豪シドニーで発生したカフェ襲撃事件のように、イスラム国支持者によるテロ活動が各国で活発となっている。なかでも楽観できないのが、2000万人以上のイスラム教徒を抱える中国だ。
『鳳凰網』によれば、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への圧政を理由に、イスラム国は中国共産党を最優先の報復対象の一つとしているという。8月には中国のイスラム教徒に対し、自分たちに忠誠を尽くすよう呼びかける声明も出した。イスラム国は数年以内に同自治区を“解放”することを計画しているという。
ウイグル過激派とイスラム国で気になるニュースもあった。『環球時報』(12月15日付)によると、分離独立を主張するウイグル人組織「東トルキスタン・イスラム運動」のメンバー約300人がイスラム国に合流し、イラクやシリアでの戦闘に参加しているという。
こうした事情もあり、人民のイスラム国に対する関心はかなり高い。広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・46歳)は話す。
「ニュース番組では、現地特派員の最新リポートがひっきりなしに放映されている。日本メディアが行かない最前線での取材を続けていて、その正確さはさておき、欧米メディアの引用記事ばかりの日本マスコミと比べても情報量も多い。中国の特派員記者は契約であるケースが多く、何かあっても会社が責任を持たなくていいという事情もあるのでしょう。また、イスラムを敵視する世論を形成し、ウイグル政策を正当化しようという狙いもあるのかもしれませんね」
一方で、イスラム国に対する漠然とした不安も増大している。上海市在住の旅行会社勤務・向井典明さん(仮名・40歳)の話。
「1人の中東系の中年の男性が、空港のセキュリティチェックを何事もなく通過したのですが、居合わせた中国人老女が保安検査員に『荷物も全部開けてチェックしなさい、テロリストかもしれないよ!』と詰め寄っていました」
北京市在住の日本車メーカー勤務・内田義隆さん(仮名・44歳)によると、イスラム国への実力行使を訴える声もあるという。
「近所に、床屋談義好きの北京人が集まる飲み屋があるんですが、『日本を攻撃せよ』という酔っぱらいナショナリストとの合言葉が最近、『我が中国軍はイスラム国を壊滅せよ!』に変わった。彼らのような人種は、多くの確率で反米ですが、『今回ばかりはアメリカと手を組んで空爆に参加すべき』という声すらあります」
自国の反政府組織との結びつきがある以上、中国が強行手段に出る可能性はある。しかし、「自分の手は汚さないだろう」と予測するのは、中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏だ。
「すでに中国は、水面下でアメリカを中心としたイスラム国掃討作戦をかなり積極的に支持している。これまでイラクやシリアへの攻撃には反対の姿勢を示してきたのとはえらい違いで、それだけ危機感を持っていることが窺える。ただ、中央アジアのイスラム諸国のエネルギー利権との兼ね合いもあり、『反イスラム』というイメージがつかないよう慎重になっている」
中国も利権にかかればイメージを気にするということ!? <取材・文/奥窪優木>
週刊SPA!連載 【中華人民毒報】
行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』 詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた ![]() ![]() |
|
『中華バカ事件簿』 激動の現代中国社会をイッキに覗き見!中国実話120選 ![]() |
【関連キーワードから記事を探す】
「日本の対米開戦」を煽った人物がいる!? 経済評論家・上念司氏が日米を争わせた黒幕を暴く
26歳のアメリカ人男性が広島・原爆ドームの前で言葉を失った瞬間「学校で教えられたこととのギャップを目の当たりにして…」
アメリカ人観光客が感動した“日本のハンバーガーチェーン”「完璧なバーガーが出てきて驚いた」旅行の際は必ず訪問
日本と違う海外の年末年始。100万人が参加、1億人がテレビ視聴する“大イベント”の正体は…
ビキニ姿のバリスタのコーヒー店や大麻専門店も。アメリカの裏風景
「日本とイスラームの理想とする社会は似ている」ムスリム協会に聞く、コーラン教義の本当の意味とは
フロリダ銃乱射だけではない…過去にもあった「イスラム国」による同性愛者への理不尽な人権侵害
「安保法制が整っても日本は何も変わりません」佐藤優
「大量のシリア難民が成田空港に流れ着く」佐藤優が大胆予測
中国が反日から“反イスラム国”に転向「今回だけはアメリカと手を組んで」
ユニクロがウイグル問題で批判される中、CM起用の桑田佳祐は何を思うのか
2019年、チャイナショックに備えよ。中国経済を崩壊させる要因たち
中国が反日から“反イスラム国”に転向「今回だけはアメリカと手を組んで」
日本のパレスチナ支援“100億円のゆくえ”を、政府が確かめようとしない理由
主要先進国はなぜパレスチナへの資金援助を見直したのか。“間接的なテロ支援”とする主張の背景
日本国民の税金が「テロに使われている」…パレスチナへの支援金“2,400億円”の行方とは
ニュースで報じない「ハマスの最終目的」とは?日本のメディアが“中立であるフリもしない”理由
「テロリストの主張は仮に正論だとしても認めない」との態度を示すべきだ/倉山満
「トランプ関税」で激変する世界経済と中国リスク。“中国依存度が高い”ユニクロ、無印良品の命運は
ハワイより近くて安い「中国のドバイ」と呼ばれる海南島に直行便で上陸。中国式“機内サービス”の驚きの充実度
下着姿で踊る女性キャスト、高額アフターも!? 歌舞伎町の中国系キャバが怪しすぎた
「おかず1個で米を5合食べる日本人」が中国で“1億回再生”され一躍スターに。本人を直撃
過熱する“反日おじさん”を当の中国人はどう見る?「気持ちはわかる」「同じ中国人と思われたくない」
この記者は、他にもこんな記事を書いています