オリンピックで大騒ぎするのはアジア人だけ。欧米人はメダルの数も気にしていない!?
新国立競技場の一件で、若干、ミソがついた感もある、2020年東京五輪・パラリンピック。もちろん、行われるからには成功裡に納まることを望むばかりだけれど、そもそも、オリンピックって世界の各国ではどう思われているのか?
『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(講談社現代新書)が話題となっている劇作家・鴻上尚史氏は、週刊SPA!連載『ドン・キホーテのピアス』で、「世界におけるオリンピックの人気」について、かつて、こんなコラムを書いている。
◆オリンピックは世界中で関心が高いのか?
僕が司会をさせてもらっているNHK BS1『cool japan』というテレビ番組でオリンピックを取り上げました。
「あなたの国では、今回のオリンピックはどれぐらい話題になっているの?」という素朴な質問をしました。
番組に参加した8人の外国人は、ほぼ全員が困ったような笑顔を見せました。この顔を見せる時は、日本人が期待していることと大きく違っている時です。
ヨーロッパの別々の国から来た外国人は、同じことを言いました。
「私の国で一番、盛り上がるスポーツ大会は、4年に一度のワールドカップです。それに比べたら、オリンピックは、ニュースにはなるけど、テレビにかじりついて見たりしないし、メダルを取ってもそんなに大騒ぎにならない」
あまりアメリカ人は「一番、盛り上がるスポーツの祭典はアメリカンフットボールね。それに比べたら、オリンピックはたいしたことないね」と当然のように言いました。
ちなみに、オーストラリア人は「やっぱりオージーボール(オーストラリアンフットボール)だね。オリンピックは、それに比べると地味だよ」と答えました。
「ええ!? オリンピックで盛り上がらないの?」と驚いて聞けば、全員が異口同音に「だって、知らない選手を見て面白い? サッカーだったら、応援している選手がいて、よく知っていて、だから興奮するじゃないか。でも、オリンピックって、どんなに高く跳んだり、遠くに投げても、知らない人だからさ。あんまり盛り上がらないんだよね」と当然の顔で答えました。
「じゃあ、オリンピックにまったく関心がないの?」という質問には、少しバラつきがあって、「まあ、ニュースでは見るよ。で、一応、メダルを取ったら喜ぶし」と答えたのは、イタリア人。
「まあ、ニュースはやってるけど、みんな、他のニュースと同じぐらいの関心しかないなあ」と答えたのは他の欧米の人達。
ただし、「とても関心がある」と答えたのは、アジアから来た外国人。「メダルの数もとても気になる」と続けて答えました。
「だよねー。メダルの数、気になるよね」と、テレビ番組の作法で日本人の集合無意識を演じて快活に返しながら、「待てよ。メダルの数を気にしているのは、アジアの国民だけかい?」とちらと考えました。
聞いてみれば案の定、欧米の外国人で、メダルの数を気にしている人は皆無でした。番組の制作者側としては、オリンピックに対する楽しみ方の違いで盛り上がろうと狙っていたのですが、「外国人はオリンピックにいかに関心がないか」という、別な意味でものすごく盛り上がりました。
日本人のオリンピックに対する盛り上がり方はクールかクールじゃないか、外国人にジャッジしてもらおうと思っていたのに、そもそも、オリンピックに関心がないので、ジャッジのしようがなかったのです。
イギリス人の参加者は、ロンドンオリンピック用に特別な税金も課せられて、ものすごく不満だと言ってる人が多いと当然のように言っていました。
優しい外国人は、日本人スタッフが「こ、こんなはずじゃなかった……」と焦っている顔色を盗み見て、「僕、バレーボールが好きだから、ちゃんとオリンピックのバレーボールの試合を見るよ」と賢明にリップサービスをしてくれました。
そこで、「ううん。日本人はバレーボールが好きとか嫌いとかじゃなくて、メダルを取れそうだってマスコミに言われると、どんな競技もものすごく気合い入れてみちゃうんだよね」と答えて、外国人に「どうして? 理解できない」という表情をされました。
「あのさあ、あなたの国では、メダルを取れなかったって自殺したアスリートはいる? 日本では、昔のことだけど、そういう人がいたんだよ」と言うと、「ワールドカップの試合でミスして、ファンに撃たれたサッカー選手はいた」と南米の外国人は答え、欧米の外国人が深く頷いていました。
アジア以外では、もっとも人気のある国民的スポーツ大会がオリンピックではない、といいうことは事実のようです。はい。
※鴻上尚史『不安を楽しめ』(扶桑社刊)より
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