日本人と外国人の考える「クール・ジャパン」は全く違っていた
― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
◆日本人を分断するクール・ジャパン
現在、舞台『ベター・ハーフ』の公演中なのですが、『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(講談社現代新書)という本を出しました。
NHK BS1でオンエアされている『cool japan』は、なんとこの4月で10年目に突入しました。番組を始めた頃は、「クール・ジャパン」という言葉は、全然、メジャーではありませんでした。風向きが変わったのは、2010年に経済産業省が「クール・ジャパン室」という部署を作ったぐらいからでしょうか。
それまで番組には、感想のメールしか来ませんでしたが、「国策番組なんだろう」とか「国の片棒を担いでるんじゃないよ」というような反発するものがまじるようになりました。つまりは内容とは関係のないメールです。
この頃、村上隆さんが「クール・ジャパンなんて、世界じゃ、誰も知らない」というようなことを発言しました。
で、また同時に、「日本万歳」というテレビ番組やムードも一方に溢れ始めました。
日本人であることが、無条件で肯定されて「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」なんていう恥ずかしいタイトルの本がそれなりに売れたりしています。
「クール・ジャパン」は、現在、両極端に分かれています。「日本を日本人が一方的に自慢することは恥ずかしい」と思う人達と「日本は世界一素晴らしいんだから、日本人に生まれたことを自慢しよう」と胸を張る人達です。
で、僕は番組の司会を10年続け、海外で二回、外国人を演出して芝居をし、講演会もし、30か国以上旅した経験から、「どーも、日本で理解されている『クール・ジャパン』は、日本人が思ってるものと違うんじゃないのかなあ」と考えるようになりました。
けれど、「クール・ジャパン」を否定する人はどんどん否定し、「クール・ジャパン」を肯定する人はどんどんしがみつく現状に対して、「これは本を出して、問題を整理しないと!」と思ったのです。
◆クールなアイスコーヒー、無礼な伝統旅館
そもそも、2006年、『cool japan』という番組を始めてすぐ、「日本に来て、これはcool(かっこいい・素敵・優れている)と思ったものは何?」という質問に、番組に出演した外国人達は、「アイスコーヒー・ママチャリ・洗浄器付き便座」の三つを上げました。
その時の衝撃は、当時、この欄に書きました。
現在、アメリカの大手のコーヒーチェーンでは当たり前のようにアイスコーヒーを売っていますが、ヨーロッパや南アメリカ、ロシアから来た外国人は、日本に来て初めてアイスコーヒーと出会い、「コーヒーなのに冷たい!」と驚愕の声を上げたのです。
現在でも、アメリカのコーヒーチェーンから離れた場所に住んでいる外国人は、日本に来て、アイスコーヒーと出会い、衝撃を受けるのです。
おそらく日本発であろうアイスコーヒーをクール・ジャパンと呼び、感動している外国人を見た時に、「この番組は成功する」と予感しました。
日本人の考える「クール・ジャパン」と全く違っていたからです。
フィギュアに反発する外国人は多いです。世界のアニメオタク、マンガオタクは、フィギュアに熱狂しますが、「いい大人が何をしているんだ」「幼児性愛か」と眉をひそめる外国人は多いです。が、「コスプレ」に対しては、圧倒的に高評価なのです。「自己表現として素晴らしい」「自分をアピールしている」と喜びます。考えてみれば、「ハロウィン」はコスプレ祭と言えるのです。
2020年に向かって日本は観光に力を入れ、日本伝統の旅館に泊まりたいと希望する外国人は増えています。が、朝、「おはようございます」の一言で、いきなり、許可もなく、寝ている部屋のドアを開けて入ってくる仲居さんの行動に、悲鳴と怒りの声を上げる西洋人は多いのです。いったい、プライバシーをなんだと思っているのかと憤るのです。
というような、日本人と外国人の考える様々な「クール・ジャパン」を書きました。日本人が納得するものもあれば、理解できないものもあります。まずは読み物として面白いと思います。
よろしければ、ぜひ。
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