「気づかれないことが成功」美女スタントマン日野由佳の素顔とは?
―[日々進化するスタントマンの世界]―
「顔を売ってナンボ」の世界で、あえて「顔が映らない」職種を歩んできたプロフェッショナルがいる。「裏方」と軽んじるなかれ。必要なのは度胸と技術。彼女なくして、アクション映画は成立しない。それがスタントマンだ。
◆走行中のバスにジャンプ!! 只今引く手あまたのスタントウーマン、日野由佳さん
「心臓に毛が生えているようだって、よく言われます」
キャリア10年。笑うと童顔の日野由佳さんは、日本国内だけでなく香港やハリウッドなど海外からの依頼が絶えない、いま最も多忙をきわめる女性スタントマンだ。
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スタントマンの適性を尋ねると、「度胸でしょうね」。何事もまずやってみることだという。
今年度、第3回ジャパンアクションアワード・ベストスタントマン賞を受賞(第1回に続き2度目)。映画『るろうに剣心』『図書館戦争』などのほかにも、AKB48のPVやCM、ゲームのモーションアクターと活動ジャンルも幅広い。香港アクション界のスター、ドニー・イェン主演の『特殊身分』(2015年日本公開)では、走行中のバスへの飛び降りスタントも演じている。
「恐いなとは思いますよ。カースタントもはじめてでしたから」
得意とするのは、殴る、蹴る、投げる、投げられるといった格闘アクション。逆にビルから飛び降りるなどのアクロバット系やカースタントは不得意で、初の体験だった。
「こういう動きがほしいと言われて、練習して無理そうならべつのものを考えたりしますが、何もせずに『できません』とは言いたくありません。もともと、わたしは何回かやってみないと出来ないほうなんですよ」
走行するバスの屋根に、飛び降りる撮影シーン。宙で両足を掻くようにバタつかせながらも、軽やかに着地する。キモのすわった女性に見えると言うと、
「よく言われます。現場で無理だと思えば、やらなくていいと香港のコーディネーターからは何度も念押しされましたが、前日からみんなで準備されていましたから、無理とは言えないですよね。でも、本当にできないと思えばやめていたと思います」
出来上がった映画の中で、その姿は映るが、彼女の「顔」は隠れている。スタントマンはあくまで、役者の「影」の存在だ。
今年35歳の日野さんが、スタントマンの世界に足を踏み入れたのは26歳のときだった。10代のうちに養成所に通うケースが多いなかで、遅いスタートである。
大学を卒業後、コンテンポラリーダンスのユニットを組んだり、劇団のオーディションに参加するなどしていた。小中学校では新体操。大学ではチアダンスと、アクションとは遠い世界にいたが、友人に誘われて始めた中国武術(対戦でなく、型を演じる)がきっかけとなった。
「後に師匠となるひとたちが練習場に来ていたんですよね」
師匠とは映画『るろうに剣心』シリーズをはじめ『SP』『黒執事』などでアクション監督を務めた大内貴仁氏。香港仕込みのリアルなアクションの練習に参加するうち「表現するのが面白くなっていった」という。
スタントマンは撮影現場では「俳優部」でなく「スタッフ」の一員。観客に存在が認識されるようであれば失敗だ。しかし、意外にカメラの正面に立つことも少なくないという。
「立ち回りの場面で動いていると顔はそんなに見えないんですよ。それに女性の場合は、髪を前に垂らすとわからなくなりますから」
手で前髪をパラッと下ろし、「こうすれば、わかりません」と首を素早く左右に動かしてみせた。
日野さんの背丈は158㎝。10㎝以上の伸長差のある女優の吹き替えを担当することもある。後日その作品を見直したが、どこからがスタントか見分けがつかなかった。一見してわかるようではプロ失格だろうが。
「でも、ただ立っているだけだと、すぐバレますね。体型がちがいますから。太腿なんか女優さんはこんなですから」
両手で拳くらいの輪をつくり、「わたしは」と輪を大きく広げ、「筋肉がついて太いんですよ」と笑う。
──やめたいと思ったことありました?
「やめてもいいと思った時期もありましたよ。5年くらい前、ハリウッドと香港の作品を5か月体験して日本に帰ってきたとき、何人ものひと(アクション監督)から、『待っていたよ。いないとタイヘンだったよ』とおっしゃってもらえたんです。そういうふうに思ってもらえるひとがいるうちは頑張りたいなと思って。この仕事は好きだし」
──キャストとして表に出て演じたいとは思ったりはしませんか?
「思わないです。まったく。台詞があると言われたら断っていますから」
──スタントマンの仕事は完成された作品に姿は残るものの「存在」は忘れ去られるものですよね。自分を出したいとは?
「思わないです。気づかれないことが成功なので。女優ではなくて、わたしはスタントをやりたくて始めたことですから」
台詞のある演技は不得手で「役者」に対する欲求は皆無だという。
「もうちょっときれいで細かったりしたら、勘違いして女優になってみようかなとか思ったかもしれませんが(笑)」
本当に? しつこく問いかけると、こんな答えが返ってきた。
「ええ、本当に。わたしでなくてもいいかなと思いますから。ただ、もし60を過ぎて、バリバリにアクションができて、それで出られるのだとしたら面白いかなと思います」
取材・文/朝山実 撮影/山本倫子
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