更新日:2016年01月24日 12:35
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マサイ族と結婚した日本人女性を直撃! 謎に満ちた大自然の生活が明らかに

 05年にマサイ族のジャクソン氏と結婚。マサイ人の第二夫人となった永松真紀さん。ケニア在住の日本人ガイドとして活動する彼女が夫・ジャクソン氏と共に来日した。昨年『クレイジージャーニー』(TBS系)にも出演して話題となった夫婦に、謎に包まれたマサイの人々の生活についてインタビュー。マサイ族の驚くべき事実が次々に明らかに! マサイ族と結婚した日本人女性 謎に満ちた大自然の生活が明らかに

野生動物との共存生活

――まず、マサイ族について教えてもらえますか? 永松:マサイ族はアフリカのケニアとタンザニアにまたがって暮らしている民族ですね。アフリカの赤道直下の国ケニアには42の異なった文化を持つ民族がいると言われています。マサイ族はそのなかでも少数の80万人ほどの牧畜民族です。 ――どんな所にお住まいなんですか? ジャクソン:私たちの住んでる場所は大自然のなかですね。シマウマとか象とかライオンなんかがまわりにいて、人間はほんの少ししかいない場所です。 永松:電気も水道もないし、トイレもない。お隣さんははるか彼方に住んでいる。でも町内会活動が活発だし、婦人会の寄り合いもありますよ。なにかあれば子供を使いにやって情報を伝えています。 ――トイレもないんですか? ジャクソン:茂みのなかで用を足します。 永松:夜はいろんな動物が動き出すので、真っ暗闇からいろんな鳴き声が聞こえてきて本当に怖いんです。私はトイレに行きたくないんで、夜はできるだけ水分をとらないようにしていますね。 ジャクソン:シマウマも鳴くし、ライオンや象も鳴きますね。 永松:あとカバもね。カバって夜になると活発に動き出すんです。トイレに行くときにカバがいたら逃げないとダメ。襲われると死んでしまうから。 ジャクソン:もしカバと遭遇したら普通に走って逃げると追いつかれてしまう。だからカバが行けないところに逃げるんです。たとえば木が倒れて横たわっているところや小さな小川を跳び越える。そうするとカバは脚が短いから動けなくなるんです。 ――トイレに行くのも命がけですね。普段はどのように暮らしているんですか? ジャクソン:マサイ族は牛や山羊とともに生活しています。私の家族は大きめの家族で20人ほどですが、牛が250頭ほど。あとヤギと羊が300頭ほどいます。普段の放牧は子供たちの仕事です。朝7時くらいから放牧に出かけ夕方に村にもどってくる。私たちの民族は3歳ぐらいから兄たちについて放牧に出る。牛の数にもよるんですが、1人で行くことも2人で行くこともありますね。 ――そんな少ない人数、しかも子供たちで数百頭の家畜を管理できるんですか? ジャクソン:私たちは牛に指示を出す牛語を話せる。子供たちもね。3歳から牛語を覚える。やってみようか? たとえば「歩いて、その先の水を飲みに行こう」という牛語は…、ピュー、ピュピュピュピュー、ピュウピュー(と口笛を吹く)。これで牛たちは歩き出す。 ――ホントに!? でも大自然に危険はないんですか?  ジャクソン:たとえばライオンが家畜をねらって近づいてくることはある。だけどライオンは人間を襲うことはない。そして子供たちはどこが危ないかを知っているから遭遇することはほとんどないんだ。でも、もしも家畜を襲われて追い払うことができない場合は走って家へ大人を呼びに帰ります。そして大人といっしょに仕返しにいくんです。

マサイ族にとって牛は通貨、財産

――普段は家畜の肉を食べて生活してるんですか? ジャクソン:いや、私たちの主食は牛乳です。 ――牛乳! それって1日どれぐらい飲むんですか? 永松:主食として飲もうとすると大人で5~6リットルぐらいですね。それが彼らの体にはいちばん合っている食生活だそうです。彼らは牛乳をこがしたひょうたんのなかにいったん入れて発酵させて飲みます。そうすることで殺菌されて冷蔵庫がなくても日持ちするし乳臭さが消える。だから非常に飲みやすいですね。牛乳の燻製みたいな感じですね。あとは家畜の肉と血。血はそのまま飲むこともあるしゼリー状に固めたり、牛乳に混ぜて飲むこともあります。パッと見はイチゴミルクみたいに見えますね(笑)。 ジャクソン:子供たちも朝放牧に出かける前、7時くらいに牛乳を飲んで出かけるんです。そして戻ってきたらまた牛乳を飲む。これが夕食。昼は基本的に食べない。子供たちは道中でおなかが空いたら木の実を食べる。あと、仲良しの鳥でエンチョショロイって鳥がいるんだけど、その鳥を呼ぶと鳥が道案内をしてくれて蜂の巣があるところまで連れて行ってくれるんです。 ――鳥の道案内って、童話みたいな話ですね。 ジャクソン:蜂の巣を見つけたら、子供たちは木の棒で火をおこす。そうすると蜂が逃げていく。そのときに蜂の子が落ちてくるんだ。エンチョショロイはこの蜂の子を食べる。子供たちは蜂蜜にありつけるんです。 ――子供たちは鳥と共生関係にあるんですね。ちなみにマサイの人々にとって趣味や娯楽ってなにがあるんですか? ジャクソン:なんだろう。虫の観察かな。私もよくやりますね。サファリアリの行列を眺めてるのが特に好きなんです。サファリアリは朝になるとシロアリの巣を襲いにいくんです。シロアリの巣を襲撃してそしてシロアリを自分の巣に持ち帰る。それを見てるとあっという間に時間が過ぎますね。
文明の利器を知りつつケニアで生活をする永松さん

文明の利器を知りつつケニアで生活をする永松さん

永松:数時間地面に座って見てるよね。サファリアリは、隊列を組んでいるんです。負傷したアリを助けに行く救助部隊がいたり、襲撃のあとパトロールする部隊があったりして見ていて飽きないらしいんです。あとアリの声が聞こえるってよく言ってるよね。 ジャクソン:人間がありの巣に近づくとアリがなにが起こったんだってあわててパニックになる。そのときに耳をすますとアリの声が聞こえるんです。それ以外に娯楽といえば、昼間にみんなで集まって木の下でおしゃべりをすることですね。 ――それは何を話すんですか? ジャクソン:主に話すのは牛の話。牛を洗うときにどんな薬を使ったとか、どこの塩をなめさせたとかね。 永松:たぶん日本の女性がファンデーションなに使ってる?って話すみたいなものなんですよ。 ――流行があったりするんですかね? ジャクソン:新しい塩が出たら、その塩を食べさせたよ。ああ、毛並みがよくなったよ。みたいな話をする。最近は携帯電話を使って毎日そんな話をしています。 永松:マサイは牛が大好き。本当に牛の話ばっかりなんです。牛はお金を持たない彼らにとって通貨みたいなもの。大切な財産なんです。私も嫁いだ際に4頭もらいました。 ――そういえば携帯電話の充電ってどうしてるんですか。電気が通ってないんですよね? ジャクソン:携帯の充電は隣町まで行きますね。でもひとりの充電をするためだけで行くってことはない。充電屋さんに行くときはみんなの携帯を20台ほど持って、さらに他の用事があるときに行くようにしています。

名声を得るために行う“ライオン狩り”

永松:マサイでは大きく分けて少年期、青年期、大人期、長老期と4つの時代があります。13歳から15歳くらいになると割礼という儀式があって、その日で少年期が終わる。そこからは別名、戦士時代といわれる青年期に入ります。大人になるにあたっていろんな修業をしていく期間ですね。指導役の長老の元について村を離れて同じ世代の若者たちと暮らしながら、自然や知恵を学んでいく。これが大人になるまで10年近く続きます。ジャクソンはすでに戦士時代を終えた大人ですね。 ――具体的に戦士時代にはどんな修業するんですか? ジャクソン:1つは、森にこもって肉を食べる「肉宴会」というもの。それから「牛泥棒」、「ライオン狩り」という修業があります。 ――どれもやけに物騒なネーミングですね(笑)。 ジャクソン:「肉宴会」は人里離れた森にこもって牛を解体するんです。血を飲んだり、肉を食べたりしながら、牛の体すべてを使い切ることを学びます。 ――それはどれくらいの期間行われるんですか? ジャクソン:人数で時間が決まってくるんですが、1人1頭牛を持ってくるので、参加人数が多かったら、それこそ1、2か月はこもることになる。 永松:まるで解剖学のようにさまざまな部位について学んでいくんです。 ――「牛泥棒」っていうのはなんなんですか? ジャクソン:他の民族の牛を盗みに行くんです。家の扉を塞いで出られないようにして、そのあいだに牛を連れていくんです。もちろん自分の村の牛が泥棒に遭うこともある。 永松:マサイ族って世界中の牛はマサイのものだという考えかたがあるんですね。神様がマサイのために作ってくれたものだと考えているんです。だからマサイの元に牛を連れて帰るのが牛のためにとっても幸せだと考えている。だから彼らにとって泥棒っていうよりも牛を助けてあげているという感覚が強いんですね。 ジャクソン:携帯電話を持つようになったここ数年は牛泥棒の対策がしやすくなった。近くの友達に電話して、牛がやられたから取り返してくれ!って言えるようになったんです。 永松:マサイに携帯電話が一気に普及したのは、この「牛泥棒」への対策が大きいのかもしれません。 ――「ライオン狩り」も文字通り、狩るんですか?
槍と盾を手にライオンと戦うジャクソン

槍と盾を手にライオンと戦う

ジャクソン:名声を得るために戦うんです。この盾と鉄槍を使ってね。寝ているライオンを襲うのはダメ。正々堂々と向かい合って戦うことに意義があります。グループでライオン探しに出かけて見つけたら戦う。ライオンは賢くて脚で槍を跳ね返す。だから我々はライオンに対して横一列に並んで、みんなで一斉にライオンに槍を投げるんです。ライオンはのどが急所なんだけどとにかく顔がでかいからとても狙いにくい。時には怪我をするし、失敗すると仲間が亡くなることもあります。 永松:誰かが怪我をしても病院も遠いし、車もないから助けようがない。それにケニアでは野生動物を保護する法律があるのでライオン狩りは認められてないんですね。だから見つかると罰せられる。でも彼らの文化ではそれは大人になるために通る重要な道だと考えられてるんです。 ジャクソン:戦士時代の卒業の儀式の始まりをつげる角笛があるんですが、その角笛にライオンの革を巻いてないといけないんです。それがあってはじめてライオンを仕留めるぐらい立派な大人になったという証明になるんです。 ――そのために戦うんですね。 〈取材・文/河上 拓〉  次回は「マサイの戦士は一夫多妻でも性に淡白」日本人女性×マサイ族夫婦を直撃。 【永松真紀】 1967年福岡県生まれ。東アフリカケニア共和国在住。88年よりフリーの旅行添乗員として全世界を巡り、96年にケニアに移住。アフリカ各地でガイド、撮影コーディネーターを手掛ける。05年にマサイ族のジャクソン氏の第二夫人となり、行こう、マサイを知るためのエコツアーを行っている 【ジャクソン】 推定年齢40歳。マサイ族青年リーダー
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