更新日:2019年09月27日 15:19
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安倍晋三さんは、よほど「逆賊」として日本の歴史に名を残したいのか?/倉山満

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1月4日、伊勢神宮の参拝を終え、年頭の記者会見をする安倍晋三首相。本会見で、新元号の事前公表が表明された。史上初となる改元の事前公表の真意とは?(写真/時事通信社)

安倍晋三さんは、よほど「逆賊」として日本の歴史に名を残したいのか?

 これまでの「憲政史研究者」の肩書に加え、「皇室史学者」を名乗ることにしました。今後とも、よろしくお引き立てのほどをお願いいたします。  さて、新年早々、安倍内閣がやらかしてくれた。毎年元旦の新聞はスクープを争うものだが、今年は「安倍内閣が4月1日に改元の事前公表を行う」だった。  昨年以来、あれほど警告したのに……。安倍晋三さんは、よほど「逆賊」として日本の歴史に名を残したいのか。  皇室に関する本を2冊出している者として、はっきり言っておく。皇室では、先例が吉、新儀は不吉なのである。なぜそうなのかは、小著『日本一やさしい天皇の講座』(扶桑社、平成29年)で詳述しておいたが、皇室はそういう伝統を積み上げてきたのだ。我が国で何かが起きた時には、公称2679年続く歴史の中に先例を探す。ただ無条件に先例に従うのではなく、「吉例」を探すのだ。  たとえば、明治維新は一見して新儀だらけだ。しかし、王政復古の大号令にあたり、「神武創業の精神」を宣言した。初代天皇である神武天皇の先例にならう、との意味である。  長い歴史を持つ我が国には、いかなる苦難をも乗り越えられる歴史の知恵が眠っているのだ。  一昨年、SPA!6月20日号において、皇室の歴史に名を残した者を列挙した。蘇我入鹿、恵美押勝(えみのおしかつ)、道鏡、足利義満……皇室を蔑ろにした、いずれ劣らぬ大悪人たちである。そして、そこに「安倍晋三」も名を連ねてしまった。「上皇后」の新儀をやらかしたからだ。安倍内閣は、伝統に基づく「皇太后」の尊称を放棄した。しかもご丁寧に、「上皇后」の規定を「皇太后の例にならう」とした。だったら、なぜ先例に基づく「皇太后」の尊称を放棄し「上皇后」の新儀を導入したのか。理解に苦しむ。  そして、史上初の、改元の事前公表である。しかも理由が、「ウィンドウズのシステム対応」である。  どうしても事前公表したいなら、昨年のカレンダーに間に合うようにすればよかった。新規立法で、一世一元の制(一人の天皇に一つの元号)をやめてしまえばよかったのだ。どうせ一世一元の制は、明治維新の時にできた新しい伝統にすぎないのだから。ところが、安倍内閣は、あえて新儀を選んだ。  さっそく1月15日、マイクロソフト社は、「4月1日の公表日の決定についてマイクロソフトは関与しておらず、4月10日のWindows Updateで新元号に対応するかどうか政府と調整はしていない。当社としては、改元の日に間に合うように最大限努力する」と説明した。「自分たちのせいにしないでほしい」との意味だ。当然だろう。  結果、安倍内閣が日本の歴史を無視して勝手に決めた「元号の事前公表」は、今上陛下の御名御璽(ぎょめいぎょじ/サインとハンコ)で行われることとなる。まさに「天皇ロボット説」、「天皇は内閣の決めたことにめくら判(原文ママ)を捺せ」としてきた東大憲法学と内閣法制局の言いなりである。  新年早々、暗い話題で始まったが、株価も下落気味だ。安倍内閣が6年もの長期政権となった唯一最大の理由は、景気が回復軌道にあったからである。ところが6年たってもデフレ脱却はできていないし、それどころか本年10月1日の消費増税10%を早々と閣議決定。既に増税分を予算の財源に組み込んでいる。安倍首相自身も「今回は増税をやり切る」と宣言している。そして「増税で景気が悪化しないように対策する」と、血眼だ。  これでは総理大臣自らが「景気を悪くする」と宣言しているようなものだ。市場関係者が今から対策を講じれば、それだけで景気は悪くなる。
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外交はどうかと言えば、これも心もとない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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