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タクシー運転手が思わずイラっとしてしまう「客の第一声」。遅れたのは自分なのに…

 国内でライドシェアなどの議論が活発に行われ、注目を集めるタクシー業界。タクシーは公共交通の一員としてお客さんを目的地まで安全・確実・快適に送り届けるのが使命だ。ただし、バスや列車、航空機、船舶などと違い、ワンオペでお客さんと直接会話する接客もしなければならない。
タクシードライバー

※画像はイメージです

 すると、いい大人なのに身勝手で常識のない人に当たることが一定確率で起こる。とくに高飛車な態度で「急かせる」客は、百害あって一利なし。その実例を現役タクシードライバーの立場からご紹介しよう

急いであげる気になれない

 うんざりするのは、目的地やルートの確認をさせないまま、「急いでいるんだ、いいから早く出せ」から始まるタイプ。アプリで呼ばれる場合は、迎車場所に着いて通知をしてもなかなか現れず、のんびり登場したくせに「急いでるから早く出して」と言い出すタイプもたまにいる。  要するに「自分が遅れたミスをオマエが挽回しろ」的な命令思考なので、ドライバーはカチンとくる。同じ急ぎでも「できるだけ急いでもらえますか」とか、「〇時の新幹線に間に合うでしょうか」など、申し訳なさそうに話をしてくれれば、道交法の許す限り努力をするけれど、命令口調だと「まったく努力する気にならない」のが本音なのだ。そもそも、いらだって運転するので安全性も保障できない。

乗った瞬間からいらだち、急かし、暴言

 たとえば、同僚のA君はアプリであるマンションに呼ばれた。指定された玄関先に停め、到着したことを通知したが、なかなか出てくる気配がない。1分、3分、5分……。これ以上待たされるなら、こちらからキャンセルしようと操作をしようとした時、30代と思しき男が現われ、足早に、無言のまま車に乗り込んできた。  本人確認のため名前と目的地を尋ねると、 「〇〇(名前)、急いでいるんだ、早く出して!」  のっけからぶっきらぼうだった。さんざん待たせたくせに、第一声がそれかい! カチンときつつも、名前は合っていたので、素直に出発。でも、まだ聞かねばならないことがあった。車を発進させると、できるだけ丁寧に、 「アプリの目的地が〇〇に設定されていますが、高速を使いますか?」  急いでいるなら高速とわかっていても、聞かねばならないことだった。
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まるで会話にならない乗客の一言
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フリーライター。定時制で東京を走り回っている現役の中年タクシードライバー

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