正直、アイドルはあきらめている。ティーンの小娘を肴に、飲み屋であるいは仕事場で、部下とのネタに困って現代アイドル論を戦わすのは抵抗がある。その成り立ちが面白くて、某ご当地アイドルに興味を持ったことはあったが、とうの昔の話。夜遊びガイドのO氏から「アイドルを観に行きませんか?」との誘いを受けた際も食指は動かなかった。「歌舞伎町のど真ん中のちょっと変わった場所で」という枕言葉を聞くまでは……。
ドラッグストアとアイドルの関係とは!?
O氏に連れていかれたのは旧コマ劇場横の大型テナントビル。指さす先には「ダイコク」と有名ドラッグストアのオレンジの看板が掲げられている。不審がる俺に構わずエレベーターに乗り込む氏。扉が開くと、やはりと言うべきか、巨大なドラッグストアが広がっていた。しかし少々様子がおかしい。生活必需品や食品が所狭しと並んぶ棚の奥から、重低音の音楽とハイテンションな歌声が流れてくる。「いらっしゃいませ~」と手招きするのは、ヘソ出し衣装の女のコたち。なんとドラッグストアの奥には巨大なシアターレストランがあったのだ。
薬局と劇場の“結界”である入り口には20人ほどの女のコの写真が貼ってある。案内されるままに席につき、ビールを注文。状況が呑み込めない俺に「ここはダイコクドラッグの従業員がやっている劇場なんです」と満面の笑顔で説明してくれたのは、従業員であり、アイドル「DDプリンセス」のリーダーでもあるありさちゃん。
聞けば、’13年に「ダイコクドラッグ」のスタッフやアルバイトで結成されたユニットで、秋葉原での活動を経て、’15年には大阪・北新地と歌舞伎町、沖縄・那覇に専用シアターを構え定期的に公演をしているそう。現在は70人ほどのメンバー全員が同社の店員で、実店舗で接客やPRを担当しているという。
「薬剤師の卵や、インバウンドに備えて4か国語を話す中国人のコもメンバーにいるんですよ」生ビールを運びつつ説明してくれたはるかちゃんは自身も大学の薬学部に通う「薬剤師の卵」。白衣とアイドル、2つの衣装を着る“二刀流”。この日も新宿西口店で接客をしてきたのだという。
そうこうしているうちに店内は暗転。DDプリンセスのライブが始まった。アップビートな音楽に合わせて舞台を所狭しと駆け回る彼女たち。どこかで聴いた曲だと思ったら、歌っているのは全国のダイコクドラッグで流れている店内ソングだ。「一大告白タイム」「サプリナ」などヒネりの利いた歌詞と、ユニークかつ元気なダンスは、勤勉な彼女たちの境遇も相まってか、我々オジさんの琴線に触れる。
気づくと、歌に合わせ天に届けとばかり拳を突き上げた俺だった。
【DDPシアター新宿店】住:東京都新宿区歌舞伎町1-21-1東亜会館6階
電:03-5155-4774
営:18~23時(ショータイム19時、20時半、22時)
休:不定休
料:生ビール550円、枝豆380円、シーフードピザ1150円、飲み放題1480円(90分)メニュー有(サービス料なし) 撮影/渡辺秀之 協力/O氏(夜遊びガイド)
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苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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