平日昼間の映画館。客層は9対1で圧倒的に女子が多い。周囲の好奇な視線に晒されながらも、ぽつねんとスクリーンに没頭していた。
『ラ・ラ・ランド』――言わずと知れた、異例のヒットを飛ばすミュージカル映画だ。
幻想的なロサンゼルスの街並みを背景に、主人公2人の夢と情熱、恋心が交錯する。39歳、“不惑”間近の中年記者・スギナミには熱量が高すぎる若者たちの青春劇。眩しすぎて直視できない……と同時に込み上げてくる焦燥感。
「オッサンだって恋がしたい!」
連日連夜のサウナ通いでデトックスされたはずの“黒い煩悩”がまたぞろ復活。フン、フー、フンフーフ♪ エンドロールで流れた曲をハミングしながら、三十路ラストの黄昏流星群を探しに、夜の赤坂見附へと向かうのであった。
美女は店の雰囲気と男への安心感に酔う
訪れたのは会員制のジャズラウンジ「エンカウンター赤坂」。同店では、20時から1時間おきに生バンドの演奏が始まる。「ジャズは時代遅れの古典芸能じゃない。相手の演奏に即興で応える、エキサイティングな音楽だ」
そう映画の主人公は語っていた。高級感溢れる店内、ジャズのBGM、そして中年男の小ジワを隠す間接照明-恋の“セッション”が生まれる舞台は揃っている。
「こんばんはー」
スタッフのエスコートで席についたのは、丸岡いずみ似のマリちゃん(仮名・28歳)。ちなみにお店にいる女性会員は皆、店に雇われたキャストではない。昼はフツーのOLで、出会いを探しにきているコたちばかりだ。「このお店は会員制だから、男の人の身元がしっかりしていて安心できます。同じようでも社内で探すのは苦手だから、やっぱり出会いを見つけるならココかな」
逆もまたしかり。名刺一枚の証明でメンバー入りすれば、夜の垢に染まっていない素人女性と気ままに席を共にできる。まさに、「ラ・ラ・ランド」症候群のサラリーマンにはうってつけのオアシスだ。
1人の女性とのセッションに明確な時間の区切りはないが、熟練のスタッフがあ・うんの呼吸で次々と新しいコを連れてきてくれる。初めての店では恒例だが、いろんなタイプの女性と“恋の音色”を奏でたい。恋遍歴や世間話をしつつ、LINEの連絡先を交換して別れる。そんなことを繰り返して、この日は4人の女性と会話を楽しむことができた。以下、印象的だった発言を振り返る。
「見た目の印象ってやっぱり大事。スーツ姿の男性は3割増しだけど、私服のデートもして見定めてみたい」(カナ・仮名・25歳)
「年上男性の経験豊かなところに惹かれます。知らない世界を教えてほしい」(ユキ・仮名・26歳) 「“運命的な出会い”に弱いんです。ばったり街中で再会して……とか」(アユ・仮名・25歳) 星空をダンスしたくなる美女ばかり。帰り道、ステップを踏むような軽い足取りで、ただならぬ恋の予感に焦がれるのであった。【エンカウンター赤坂】
住:港区赤坂3-8-17 パンジャパンビルB1
電:03-5114-0565
営:17時45分~翌1時
休:日祝
料:基本チャージは6000円(税8% サ20% 入会費、年会費無料)
繁華街の真ん中にある路面店。六本木本店、銀座店も。
詳細はHP(http://www.en-counter.jp/)まで
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スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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