まだ10代のころ、アルバイトで稼いだわずかなカネを握りしめて、緊張しながら、浅草の地に降り立ったことを。目指したのは、六区に輝くランドマーク「ロック座」。受付に5千円札を放り込み「大人1枚」と無理に低い声で言い放った時、ちょっと男になった気がしたものだ。
その後のショーのことはよく覚えていない。とにかく眩しくて、美しくて、助平心を抱いていた自分を恥じたことだけが印象にある。
二十数年がたち、久しぶりにストリップを見た。女性や外国人観光客で埋まった客席に隔世の感を抱きつつ、当時と変わらない完成度の高いショーには目を見張った。ロック座からすぐそばの「煮込み通り」の居酒屋で、“初体験”の思い出に浸っていると、O氏が言う。「せっかくだから、ロック座の伝説に会いにいきませんか?」
訪れたのは国際通り沿い。観光客があまり訪れない、昔ながらの歓楽街としての浅草が根付く一角にその店はあった。
カウンターのなかに浅草のスターが!
「いらっしゃいませ~!」尻出しのママのイラスト。やや入りづらいトビラを勇気を持って開けると、カウンターレディのお姉さま方が快活に迎えてくれた。
「こっ、こんばんは!」
いつになく緊張気味のO氏。視線の先には伝説のストリッパー・雅麗華さんがカウンターのなかで優しく微笑んでいるではないか。
まずはママとお姉さま方を交えてビールで乾杯。すかさず麗華ママお手製のお通しが出てくる。「ウチは居酒屋とスナックの中間だから『居ざっく』。スナックみたいにコテコテじゃないし、料理も楽しみながらワイワイできる、気軽な店なんですよ」
18歳でストリッパーとしてデビューすると、その愛くるしい笑顔でたちまちトップダンサーに。今から10年前、39歳で引退。引退興行の時は、スポーツ紙はおろか、一般紙までラストステージを伝えたほどのレジェンドなのだ。 「お酒が好きだからこの店を始めたの」とママが笑う通り、一旦、乾杯してしまえば気さくな雰囲気だ。「ウチのキレイどころを紹介しますね」
ママに促されて、俺の隣に座ってくれたのは、ロック座で踊っていた元踊り子のりかさん。スラリとしたスタイルの美人だ。曰く、ママを慕った後輩ストリッパーがカウンターに入ったり、普通にお客として飲みにきたりもするそうだ。
「名物も食べてもらおうかな~」と出てきたのはなんとにんにくのソテー。「スタミナつけてね~」といたずらっぽく笑うママに思わず焼酎をボトルで入れてしまう俺。
伝説のストリッパーに“かぶりつき”つつ、舞台に思いを馳せる。浅草の夜は、味わい深い……。
●雅 麗華さん
父はロック座の支配人、母は踊り子、両親の逃避行先の長野のストリップ劇場で誕生したという“超”のつくサラブレッド。’85年、浅草ロック座でデビュー。アイドル顔負けのルックスと日舞とラスベガス仕込みのダンスで大人気に。’07年、39歳で引退。現在は振付師の傍ら、レビューチーム「サバヴィアン」で定期的に舞台に立つ
【居ざっく 雅麗華の店】
住:東京都台東区西浅草3-1-9 松井ビル3階
電:03-3845-7099
営:19時~翌1時
休:日・祝
料:セット90分(お通し2品つき)男性4000円、女性3000円。ボトルキープ2500円~
●麗華ママお手製の居酒屋メニューも
-
苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
-
苫米地の他の記事