酷暑とコロナ禍、齢四十を過ぎた身には、日々の生活を送るにも何かと気を使う。外回りの帰り、大きな汗染みをつくったシャツにほとほと嫌気が差して、新橋の老舗サウナに駆け込んだ。汗を流し、水風呂で体を冷ますと、腹が減る。サウナで生ビールを一気に流し込み、精気を取り戻した後は、少し涼しくなった夜の街へ……。
新橋は烏森口、新橋西口通りのアーケードをくぐると、ご時世にもかかわらず活況だ。寿司店が入る雑居ビルの前にはワイシャツとタイトスカートの女のコ。気になって声をかけると、ワインをメインにしたガールズバーだという。
「感染対策はバッチリ、レアなワインもありますよ」アクリル板設置で飛沫感染を完全に防止
狭い階段を4階まで上がり、木戸を開けると、こぢんまりとしたおしゃれな空間が広がっていた。
カウンターには女のコ、その前には大きなアクリル板、ちょっと面食らっていると、隙間から女のコが非接触型の体温計を取り出した。平熱を確認、手指消毒のあと、冷たいおしぼりが出される。
「快適さをモットーに営業していたんですが、ウチは土地柄大人のお客さまが多いので、安全安心を第一に営業することにしたんです」名札に“新橋の愛人”と書かれたはるかちゃんが説明する。ピカピカに磨かれたアクリル板は、会話の妨げにならないよう、市販品だと厚さ3mmのところ、2.5mmの医療用。隣との座席の間隔は2m。感心するほど徹底されている。
「常備50本以上のワインがあり、グラスワインでお楽しみいただくものはサーバーからお注ぎします」
サーバー!? ワインクーラーの横に鎮座しているのは人生で初めて見るワインサーバー。これによって一度開けたワインの酸化を防ぎ、新鮮な状態に保てるという。カリフォルニア中心の高級ワインをお手軽に!
高級ワイン、オーパス・ワンの産地で知られるカリフォルニアのナパ・バレーの赤ワインをグラスでいただく。注がれるグラスもオーストリアの名門ブランド、リーデル社のものというから、この店のこだわりはただものではない。
「運営会社がワインの輸入を手がけているので、小売りと変わらない値段でお出しすることができるんです。カリフォルニアワインの品揃えは首都圏屈指だと思います」シャトー・ラギオールのワインオープナーを巧みに扱い、ボトルからコルクを抜くはるかちゃん。ここは果たしてガールズバーなのか? 少々気後れしつつも乾杯。
アクリル板の下からグラスを出してグラスを合わせる。
ワインも女のコもお気に入りを見つけて
ぐっとひと口、鼻腔に広がるふくよかな香り。コロナ自粛中に煽っていた自宅ワインとは大違いだ。
「わ〜、美味しい!」
アクリル板の中ではしゃぐ、ひいらぎちゃん、ハルちゃん。ワイン好きが高じてこの店に入店したという2人の頬がほのかに赤らむ。
BGMはジャズ……否、’80年代歌謡曲。德永明が耳に心地よい。リフレシュ&リラックスした俺。隠れ家として重宝しそうだ。
【烏森ガールズワイナリー】
住:東京都港区新橋3-21-10オルバス第一ビル4F
電:03-3438-0101
営:19:00〜翌4:00(月〜金)、17:30〜翌4:00(土)
休:日・祝
料:1セット50分2980円〜(ワイン、瓶ビール、生ハイボール等飲み放題)
撮影/渡辺秀之
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苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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