北風が身に沁みる季節となった。コートの襟を立て、足早に歩く人々とすれ違う。いろいろあった今年もあとふた月弱。酒を心から楽しんだ月日はいつの日か。おセンチな気分に包まれていると、久々に夜遊びガイドのO氏から電話が。
「おでん屋にでも行って一杯やりませんか? 秋葉原です」
はて? アキバにおでんを食わす店なぞあっただろうか? チチブデンキ跡の自販機で売られている名物「おでん缶」ではないか?
指定された住所に行くと、派手な立て看板が林立している。「アニソンDJバー」「透視カフェ」「仔猫カフェ」……エレベーターに乗ればバニーガールと出くわす。アキバらしいテナント満載のビルに目指す「うさぎつね」はあった。
和服美人が心尽くしのおもてなしをします
「いらっしゃいませ」
スナックのような小さなドアを開けると和服姿の女将が出迎えてくれた。奥の席ではO氏がご機嫌で手招きしているではないか。「ここはおでんと日本酒を楽しんでいただけるガールズバーです。全国から集めた地酒が飲み放題で召し上がっていただけますよ」
カウンターに座ると温かいおしぼり、グラスがセッティングされた。おでん鍋からは出汁の香りとともに湯気が立ち上っている。急いてきたのでまずはビールを所望する。供されたのは瓶ビール、それも「キリンラガー」という優等生だ。和服姿の女将が栓抜きでポンと栓を抜き、「おひとつどうぞ」とグラスに注いでくれる。瓶ビールも飲み放題のメニューに入っているというから、心を摑まれる。
O氏とともにおでんを注文。入荷したばかりだという新酒を勧められた氏はグイと飲み干している。
と大きめのグラスに水を注いでくれながら、酒をもっきり入れてくれる。俺もここで日本酒にチェンジ。表面張力に感謝しつつ、口から迎える酒は、よく染みたおでんにベストマッチだろう。
おでんの湯気と水タバコの白い煙と
「実は、名物があるんですよ」
見慣れぬ器具がセッティングされた。固形の炭をのせると、女将がパイプをふかし始めた。白煙がモクモク、そのギャップに仰天。
「水タバコが楽しめるんです。40種類ほどのフレーバーがあるんで、好みの味が絶対にありますよ。私たちもみんなハマっているんです」
白煙をブワァッと吐く女将。吸い口は専用アタッチメントが渡されるので、このご時世でも安心だ。O氏と俺もチャレンジ。タバコとは違う味がなんとも不思議だが、煙を勢いよく吐くのが楽しい。
「最後はこれでシメましょうか」
と女将が作ってくれたのは「出汁割り」。日本酒をおでんの出汁で割った赤羽の某おでん店をオマージュした名物。八幡屋礒五郎の七味がピリリと効いて美味だ。心も体もすっかり温まった。
【うさぎつね】
住:東京都千代田区神田佐久間町1-16-1大橋ビル504
電:03-3525-4237
営:18~24時(土日は15時~)※特別営業中
休:なし
料:50分・税込み2840円(~21時)、同3480円(21時~)飲み放題。水タバコ1480円
撮影/渡辺秀之 協力/O氏(夜遊びガイド)
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苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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