緊急事態宣言中、「酒なんて飲まなくても全然いい」などという声も耳にしたが、「本気か?」と思う。年を重ねれば、いろいろなことが見えてくるが、見えるからこそ辛いこともある。「こんなもんだろう」「いや、もっとできたはず」。いつだって現実はままならない。酒はそんな逡巡から、束の間、目を逸らさせてくれる。
「男は一生、修行だからさ」。30代の頃、悔し涙に濡れて管を巻く自分を、初老のマスターがそう諭した。深夜の酒場には、優しさが吹き溜まっていた。「君の男の器は、まだお猪口並みだな」「ほんと、そうですね」。笑い合ったあくる日、馴染みの別の店の扉を叩く。すると、こんな挨拶が飛んできた。
「あ、チョコちゃん! また、飲んだくれてたんだって~?」
いつの間にか、酒場界隈で自分の名はチョコになっていた。いつだって現実はままならない。
女装で初めてわかる新しい世界と感覚!
そんな厳しくも温かな酒場に通えないなんて、日本、終わってる……鬱々とした日々のなか、刺激と優しさを求めて新宿二丁目の女装サロンバー「女の子クラブ」を訪れた。
「酒なんか飲むな? 上等! だったら新しい扉、開けてやんよ!」と入店すると、そこにいたのはたおやかな女子たち。カウンターで隣り合うゆらっこさんは、元スタッフで今も客として足を運ぶ、東大卒の才媛(?)だ。
「会社にもお化粧して女装で行ってます。いまだに女子社員と勘違いされることもあるんですよ」日本、始まってた!「チョコさんも女装したらいいのに~」という甘い誘惑に乗り、スタッフのぬぬさんに身を任せる。
全部お任せで女装完成「アタシの夜」が始まる!
「ここで初体験の人も多いです。女装してくると安くなるから、結構ハマる人もいますよ」
メイクをしながら話を交わすが、顔が近い上にぬぬさんがやけに艶っぽくて緊張する……。そして、30分後、人生初の女装が完成。「えー、めっちゃいいです!」
女子たちの声に、まんざらでもない気がしてくる。というか、男の服に比べて生地が薄い! 外気に身を晒している感覚があり、男に距離を詰められたら、ちょっと怖い。もし下着も女性用なら、なおさらだろう。女装して初めて知るリアルな女性の感覚。これからはもっと丁寧に接しなくては。男の娘と過ごす甘くて非日常な夜
そして、3人で女子会がスタート。常々、「女子会なんて、何が楽しいのやら」と思っていたが……これがめちゃくちゃ楽しい! 服とかメイクの話とかめっちゃしたいし、もっとキレイになりたい自分が生まれつつある。
「底なし沼へ、ようこそ~」
2人の笑顔は、ある意味、酒より刺激的。担当初回からこんな忘れられない夜になるなんて。これでアルコールOKになったら、アタシ、一体どうなっちゃうの!?【女装サロンバー「女の子クラブ」】
住:東京都新宿区新宿2-13-16 SENSHOビル4階
電:03-5357-7875
営:13~20時
休:年中無休
料:セット料金3000円(男性)、2000円(女性・女装含む)+ドリンク代700円~。
フルメイクサービスは4000円
※営業時間や酒類提供の有無が変更になる可能性があります。店舗にお問い合わせください
撮影/髙橋慶佑
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オチョコ 酒場で夜な夜な号泣し、ついた通り名がお猪口のチョコ。座右の銘は「バーは謝りに行く所」
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