マカティ地区のリトル・トーキョー付近が次なる目的地。「昴」「北の国から」「雅」といった、おなじみの“スナック店名”の看板を横目に、直感で足を踏み入れたのは「スナックfor you」なるお店。40代と思しき店のママから料金システムを説明される。
「女のコはみんな日本語ペラペラ、日本人食い足りないコばかりヨ。こん中からどれでも好きなコ持ってけ~、このヤリチン! 早漏!」などと、入管法の厳しくなった昨今の日本のフィリピンパブでは、なかなか耳にしなくなった下ネタ発言がママの口からポンポン飛び出して、飲みの場を温めてくれる。
「片思いの日本人、東京にいるね。亀戸に住んでるH本って男よ。あいつひどい男。私の恋心を踏みにじったね。私の代わりに、日本に帰ったら殴ってよ。お願いよ」
日本でタレントとして働くこと15年というママの恋物語。痛手を負った男女が集うスナックコミュニティの奥深さをここでも味わうことができた。
楽しいのはトークだけではない。カラオケをリクエストすれば、二十数人のホステスがステージで一緒にバックダンスを披露。女のコとテキーラを飲みかわし、混沌の夜はあっという間にふけていく。
ママの一代記、チーク、昭和歌謡、そして……恋の予感。日本のスナック文化は海を越え、南国の地で花を咲かせていたのであった。
■俺の夜 百二十四夜 後編 (⇒前編)
協力/猪口貴裕
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スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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