今日は立川、明日は上野。都内スナックを東奔西走、夜討ち朝寝を繰り返すこと1年半。安スナック特有の“トイレの芳香剤臭”にも馴染み、すっかり“通”を気取っていたスギナミ。しかし、井の中の蛙にすぎないことを思い知ったのは、東中野のスナック『L』で、常連客S(45歳)と小向美奈子騒動の話を肴に、3本目の鏡月ボトルを空ける頃であった。
「小向が潜伏してるマニラは俺もよく遊びに行くんだけどさ、スナックの充実度は東南アジア一だよ、金メダルだね。日本のフィリピンパブで不法就労ウン十年ってタレントがママになって、女のコに日本語や歌を徹底的に仕込んでるから、会話にも不自由しないしね」
連れ出し、ソープ、ゴーゴーバー。東南アジアの“オトコ旅”といえば射精系の遊戯が基本。しかし、日本語が通じるのであれば、日本よりも安い料金でスナック遊びができる。これは盲点だった。
これまで都内のみならず、地方の現地スナックへも足を運んできたが、とうとう海外へ目を向けるときがきたのかもしれない。気がつけば僕は航空券を握りしめ、テカテカとした笑みを浮かべるオッサン客でむせ返る、成田空港のマニラ行き出発ロビーにいた。
明るい笑顔と母性愛。魅惑の褐色美女たち
成田から3時間半。マニラのニノイ・アキノ空港に到着した僕とスナック仲間のI氏。熱気と喧しいクラクション音。東南アジア特有の喧噪に酔いつつも、まずは空港からタクシーで20分ほどのところにあるマニラ最大の繁華街・エルミタ地区へと向かう。
街中にはショットガンで武装した警官が屹立し、鋭い目つきを投げかけてくる現地人と合わせて緊張感が高まる。夜の路上を闊歩することに身の危険を感じ、とにかく店内に避難しようと選んだのが「ニュー930」なるお店。席につくなり、制服美少女がズラリと勢揃い。褐色版AKB48ともいうべき面々に目移りしつつ、風吹ジュン似の女のコを指さす。「ご指名アリガトゴザイマ~ス」と満面の笑みで熱い抱擁&キッスでお出迎え。旅のお目当てである“日本式スナック”ではなくキャバクラに近い業態ではあるが、フィリピン娘特有の底抜けに明るい笑顔とホスピタリティを再確認。銀座の老舗キャバレーで鍛えたチークダンスでギャルと密着し、熱い吐息と肌の匂いを五感で満喫。ほろ酔い気分で店をあとにした。
褐色の美女たちが飲みの席を明るく盛り上げる
■俺の夜 百二十四夜 前編
協力/猪口貴裕
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スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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